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科学コミュニケーター 中西貴之
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Chapter-60 天気が悪いと腰が痛い・・・は本当? 
2005年4月22日

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 慢性の関節リウマチや偏頭痛、腰痛症などの患者さんは雨が降り出しそうな天気の日には悪い場所が普段より痛むと感じることが多いようです。天気が悪くなると身体のあちこちが痛くなる。これは本当なのでしょうか。

 文献によると、天気と腰痛に相関が見られたという報告もありますし、全く逆にそれらには統計的な相関はなかったという報告や、患者さんの思いこみや錯覚によるものだと述べている論文もあってはっきりしない部分が多いようです。

 日本の雑誌「ファルマシア」2005年3月号に名古屋大学の研究チームが「気象変化による慢性疼痛悪化のメカニズム」という題で投稿していますが、ここではラットを使った実験で天気と痛みには関係があると結論づけていますので今週はこの発表を中心に紹介します。

 今回の研究では気象の変化を気圧の変化であるととらえ、気圧を調節できる実験施設で慢性的に痛みを感じるモデル動物の反応を調べることによって結論を得ようと試みました。

痛みを感じるモデル動物 = リウマチラット、座骨神経損傷ラット

 これらのラットは例えば足の裏などに刺激をしてやると痛みを感じて足を持ち上げることによってその刺激を避けようとします。足の裏を刺激しても痛みを感じなければ足を動かすことはありませんし、強い痛みを感じればその分強く反応することが知られていますので、この動物を使うことによって痛みを測定することができます。

 実験はまず最初に、天気の良いときの気圧に設定した実験室にラットを入れて、下記の3段階の強さで足の裏を刺激しました。

第一段階・・・何も感じないほどかすかな刺激
第二段階・・・十分に痛みを感じるちょうど良い刺激
第三段階・・・強い痛みを感じる激しい刺激

 次に、一般的な低気圧と同じ状態まで気圧を下げて同じ三種類の刺激を与えます。この刺激は気圧を下げた直後と、30分ほど経過してその気圧に身体が慣れた頃の2回実施しました。

 その結果、気圧を下げることによって痛みを感じる閾値の低下と痛みの反応の増強が観察されたということです。

 ところが30分後に同じ刺激を与えると、この時には高気圧状態と同じ反応しか示さず、低気圧による痛み閾値の低下と痛み反応の増強は気圧そのものが問題なのではなく、気圧が低く変化することが問題であることがわかりました。

 気圧の低下が痛みを増強するメカニズムは交感神経系の関与が考えられました。そこで、ラットの血圧と心拍数をモニターしながら気圧を変動させ、それに伴って血圧や心拍数がどのように変化するかを調べました。交感神経が興奮すると血圧と心拍数が上昇するのですが、気圧を下げると見事に血圧と心拍数が上昇し、気圧の低下と交感神経の興奮が関係していることが示されました。この結果から気圧が低下することによって交感神経が興奮し、アドレナリンがたくさん分泌され、アドレナリンによって血管が収縮し組織が貧血・酸欠状態となって痛みを増強するのではないかと現在は考えられています。

 また、気圧センサーは身体のどこにあるのかという問題については、別の研究で内耳にあることがわかっていますが、内耳のどの部分でどのようにして気圧を検出しているのかについては現在研究中だそうです。

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