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2009年8月1日
Chapter-249 脳神経科学の話題
人間は他の人の顔を瞬時に識別することができますが、その際脳が行っているのは、目鼻口といった個別の特徴をいちいち解析するのではなく、それら全体のバランスに着目していることが知られています。また、このような顔認識は上下が正しく見えている顔に対してより反応しやすいことも報告されています。
アカゲザルもサルの顔に対して人間同様に上下反転で反応が変化することを、京都大学の研究者らがサッチャー錯視をサルに見せる実験で確認しました。霊長類の進化の過程でヒトとアカゲザルは約3000万年前に分岐したことから、ヒトは少なくとも約3000万年前から、このような方法で他者の顔を認識していた可能性があります。
若い頃に優れた言語技能を身につけた人は歳をとってもアルツハイマー病になりにくい可能性があります。米国ジョンズ・ホプキンス医科大学の研究者らによると、高齢時の認知症の程度を、
・まったく認知症にならなかった人
・軽い認知症があった人
・アルツハイマー型認知症と診断を受けた人
の3つの群に分け、その脳の状態とその人たちが若い頃に綴った文章との関連を調べたところ、脳の検査でアルツハイマー型認知症と同じ変化が確認されているにも関わらず、若いときから言語技能が優れていた人は、例え脳に大きな損傷が生じていても病気の症状が表に出にくいという相関関係があることを明らかにしました。このことは、10代の頃に高い言語技能を習得していると、50?60年後に認知症になる確率を下げることができる可能性を示唆しています。
また、多くの言語を操るマルチリンガルな人はアルツハイマー病になりにくいという報告もあり、これらのことは、アルツハイマー病が発症する人といない人がいる問題を解決するにあたっては、βアミロイドタンパク質などの神経繊維の変化などのように目に見えるものだけを対象にして研究するのではなく、その人の過去の勉学の程度なども科学的に考察する必要性がありそうです。
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタです。
▼黄砂・13日で世界一周(日経2009年7月21日夕刊)
中国内陸のタクラマカン砂漠から舞い上がった黄砂は、日本海→太平洋横断→北米大陸横断→大西洋横断→北欧→タクラマカン砂漠 の順路で13日かけて世界一周しているようです。タクラマカン砂漠で舞い上がったダストのうち6割が高度8000〜10000メートルの対流圏上部にまで持ち上げられ、偏西風に乗ると言うことです。黄砂は雲の形成に寄与しますので地球温暖化に関係しているという説があります。
▼量子ドット型太陽電池
化合物にナノメートルサイズの極微細な半導体粒子(量子ドット)を作り込み、量子効果を利用して発電する太陽電池。半導体の大きさを工夫することによって太陽に含まれる様々な波長の光を発電に利用できるため、発電効率が既存シリコン系の2倍にあたる60%まで向上できる。
▼講演会のご案内
2009年8月8日(土曜日)10時〜12時
場所:下関市市立彦島図書館2階視聴覚室
入場無料
▼新刊の紹介
おびおが書いた科学の本が7月24日頃、全国の書店に並びます。今回のテーマも前回に引き続き食品ですが、前回の「食品汚染はなにが危ないのか」では食品添加物などに着目しましたが、今回は食品中の血となり肉となる成分について考えてみました。
太陽の恵みをいっぱいに浴びて育った野菜や果物、丸々と太った家畜から得られる肉類。それらが私たちの体の中で緻密に役割分担しながら、私たち人間を動かしているメカニズムを、ちょっとのぞいてみたいと思います。
タイトル:食べ物はこうして血となり肉となる ~ちょっと意外な体の中の食物動態~
技術評論社 2009年7月24日頃発売 1659円
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