インターネット科学情報番組



科学コミュニケーター 中西貴之
アシスタント BJ

私たちは難しい科学を正しくわかりやすく伝えます。

トップページ番組コンセプトバックナンバー

本も書いてます





ネット上の書店で検索していただくか、お近くの書店カウンターでお問い合わせ下さい。くりらじ直営の「Amadion」でも販売しています。

 このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。
 この番組は週替わりで最新の科学情報をわかりやすく解説しています。番組コンセプトはこちらをご覧ください。>>クリック 
 
 番組を視聴するにはリアルプレーヤー、または MP3に対応したプレーヤーをPCにインストールする必要があります。お使いのPCにリアルプレーヤーがインストールされていない方は、リアルネットワークス社のサイトから無料で再生ソフトをダウンロードすることが出来ます。
 >>無料ダウンロードできるページ

[今週の Openig Talk]

■日本人宇宙飛行士の野口聡一さんと世界初の宇宙ラーメンが搭乗するスペースシャトルの打ち上げが7月に延期されることになりました。

■学研の「学習」と「科学」を訪問販売していた学習研究社家庭訪問販売事業部門縮小。ピーク時の1979年には620万部を売り上げていたら用雑誌も現在は100万部にとどまり、堂事業部は年間13億円の赤字を出しているそうです。

[最近の放送]>>バックナンバー  

Chapter-63 シリーズ人工衛星「JWST」     
Chapter-62 ヒトの脳の進化は特別な出来事だった 
Chapter-61 延命薬はできるのか? 
Chapter-60 天気が悪いと腰が痛い・・・は本当?
 
Chapter-59 宇宙ラーメン  
Chapter-58 最新の宇宙探索成果  
Chapter-57 犬ががん検診をする時代が来るかも  
Chapter-56 ドクターイエローのテクノロジー  
Chapter-55 タイムマシンを作る  
Chapter-54 青いバラ  
Chapter-53 夢でシミュレーションする私たち  
Chapter-52 超高速インターネット衛星 WINDS 
Chapter-51 ビールに放射線防護作用が  

 

 

Chapter-64 英語文法中枢 
2005年4月30日

今週の放送を聴くダウンロードする次回の放送

 これは平成17年2月9日に発行された科学技術振興機構報 第151号に掲載された研究成果です。

 機能的磁気共鳴映像法(fMRI)の実験から、英語の熟達度(今回は指標として英語の不規則動詞の過去形に対する正答率を採用した)で脳の「文法中枢」の反応が変わることを初めて直接的に証明しました。

fMRIについて。
>>東芝メディカルシステムズ株式会社のサイトに詳しいのでこちらをご参照ください。

 脳科学の進歩に伴い、人間の脳の活動を画像として捉える機能イメージングの手法を用いて、心のさまざまな機能の座が、脳のどこにあるかを調べられるようになってきました。しかし、言語などの高次機能の脳における発達メカニズムはまだほとんどわかっていないため、今回、研究者らは第二言語である英語の熟達度に注目して、英語の文法知識がどのようにして定着するのかという謎を脳の機能の観点から解決しようとしたものです。

 新たな外国語の習得訓練を短期集中的に行えば、成績の向上に比例して脳の文法中枢の活動も向上することが明らかとなっています。しかし、中学生から大学生に至るまで英語が定着していく過程で、長期的に文法中枢の活動がどのように変化するかについては明らかになっていませんでした。

 今回の研究の結論は、大学生を対象として、英語に関連する課題を行っている際の脳活動をfMRIにより測定したところ、英語の「熟達度」が高くなるほど文法中枢の活動が節約されていることが明らかになったというものです。

 具体的には海外の滞在経験がなく、中1(12才)のときから英語を学び始めている日本語を母語とする右利きの大学生15名(19才)に対し、言語課題として次のような問題を出しました。すなわち、提示された英語の動詞の同じものを選んだりその過去形を選んだりする課題、また、日本語の動詞を示してその英語訳とさらにその過去形を選ばせる問題です。そして、この課題に取り組んでいる間の脳の活動をfMRIで測定しました。

 

 

 その結果、英語の組み合わせ課題では左脳(L)の言葉の中枢として知られているブローカ野を含む前頭前野に最も強い活動が観察されました。さらに、ブローカ野の活動が熟達度によってどのように変化するかを調べたところ、統計的に有意な負の相関が見られた。すなわち、熟達度が高くなるほどブローカ野の活動が節約されているということがわかりました。

 ブローカ野の名前の由来はフランス人医師ピエール・ポール・ブローカ(1824−1880)に由来しています。1861年4月、ブローカが勤めていたビセートル病院にルボルニュという51歳の男性が入院してきました。ブローカが何を尋ねても、彼は「タン、タン」と2度繰り返すだけでした。しかし、その他の知能はまったく正常で、病院では「タンさん」と呼ばれていました。彼は、他人のいうことは何でもわかり、いろいろなジェスチャーでおおまかな意志の伝達ができたそうです。彼は入院後わずか数日で死亡しました。ブローカはその24時間後に剖検を行い、左の下前頭回に脳梗塞を見い出し、これが彼から言語機能を奪ってた原因であろうと考え、運動性言語野は発見された。この領域はブローカの名前をとってブローカの運動性言語野、ブローカ野、ブローカの中枢とも呼ばれています。

 今回の成果と、英語習得を開始したばかりの中学生の英語の成績の向上に比例して文法中枢の活動が増加することを合わせると、中学生から大学生にかけて英語が定着するに従って、文法中枢の活動が高まり、維持され、節約されるというダイナミックな変化が見られることが示唆され、この研究成果は、語学教育の改善や言語の獲得機構の解明へとつながることが期待されます。

 Amazon.co.jpアソシエイト