【iPad アプリ発売開始】 【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】 記憶と学習が行われる際に見られる変化は、専門用語では「長期増強(LTP)」「長期抑圧(LTD)」といいます。これは読んで字の如く、長期増強は神経伝達効率が長期的に増加することで、長期抑圧は低下することです。一般的には、長期増強は記憶を形成するプロセスで、長期抑圧は記憶を消去する過程だと考えられます。 慶應義塾大学と筑波大学の共同研究チームは、記憶形成において重要な役割を果たす海馬に着目し、マウスの培養海馬神経細胞に、記憶を失わせる作用となる長期抑圧誘導刺激を与えたところ、特定のタンパク質に急速な脱リン酸化という反応が起きました。脱リン酸化されたタンパク質は著しく活性化し、細胞と細胞の接続部分であり、情報の伝達や記憶に重要な役割を担っていると考えられているシナプス領域で記憶を消去する化学反応が進行しました。 今回発見された特殊なタンパク質はPIP5Kγ661と名付けられていますが、この機能は、人間の記憶・学習過程にも同様に関与していると考えられます。また、このタンパク質(酵素)の活性を人為的に制御する方法が発見されれば、記憶や学習の制御に繋がっていく可能性も考えられ、アルツハイマー病に代表されるような、記憶・学習能力が低下する疾患の治療や、逆に不要な記憶・精神的トラウマの除去といった臨床面への応用が期待されます。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
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