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2009年9月5日
Chapter-254 水素から電子を取り出す新しい触媒の発見
九州大学未来化学創造センターの研究グループが、常温・常圧で水の中の水素から電子を取り出す作用を持つ物質の開発に成功しました。
この研究は、燃料電池に変わる新しいエネルギー源として画期的な電池を生み出すことにつながると考えられ、将来ノーベル賞を受賞するかもしれない、産業上非常に有用な発見です。
今回の研究のすごい点は次の3つです。
・これまで知られていなかった画期的な反応メカニズムで電子を生み出すこと
・非常に安価なしくみであること
・触媒がバイオインスパイアード触媒であること
コップに水を入れて置いておいただけではそこから電子が次々に出てくることはありません。コップに入った状態の水と、電子を出している状態の水は全く状態が異なるため、水に含まれる水素から電子を取り出すには何かの仕掛けが必要です。その仕掛けが触媒です。
タンパク質の仲間である酵素も触媒で、中には電子を取り出す能力があるものもありますが、酵素は産業に利用しにくい場合もあります。そこで、今回のキーワードとなるバイオインスパイアード触媒の登場です。バイオインスパイアード触媒とは生命の営みを観察することによって発明された触媒のことです。今回、考え出された触媒は水素を活性化する酵素ヒドロゲナーゼの水素の活性化に直接関わっている部分だけを取り出した触媒です。
この触媒にはニッケルが含まれています。これまでの燃料電池のような水素から電子を取り出す触媒では高価な白金を使用していましたが、ニッケルは白金の数十分の一の価格で購入できますので、電池の材料として非常に有利です。
今回発明されたバイオインスパイアード触媒の働きも注目すべき点です。というのも、水素から電子を取り出す仕組みが、これまで知られていなかった4電子系メカニズムと呼ばれるものだったのです。つまり、2分子の水素(H2)から2個ずつのH+とH-を生成し、そこから2個のH+、1個の水素分子、2個の電子を作り出していることが判明したのですが、このメカニズムが解明されたことは科学的には非常に画期的なことです。
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタです。
▼あらまた同じところだ
ジャングルなどで道に迷い、出口を探して歩き回る。気がつくと一度通った場所に戻ってきていた、しかも何度も。でも、普通に考えると、いくら道に迷ってもまっすぐあるいていれば何度も同じ場所に戻ってきてしまうことはないはずです。ドイツにあるマックスプランク研究所の研究グループはこの現象を検証するために、15名の実験協力者に背丈の高い野草が生い茂り、見晴らしの効かない草原を真っ直ぐに歩くように指示する実験を行いました。すると、ほとんどの実験協力者が指示通りに真っ直ぐに歩くことはできず、最小ではわずか20メートルの円を描いてぐるぐると回ってしまうことがわかりました。その理由は筋肉の力の左右差や脳の機能の関係などが考えられますがよく分かっていません。
▼新しい元素の誕生
元素の数が112に増えました。原子番号112のこの元素は、1996年にドイツ・重イオン科学研究所などの国際チームが人工的に作り出した元素です。名前はまだありませんが地動説で有名なポーランドの天文学者コペルニクスにちなんで「コペルニシウム」となるものと思われます。
▼ドイツが洋上風力発電に進出
ドイツは電力の7%が風力によってまかなわれています。ドイツには約2万基の発電用風車があり、陸上の風力発電に向いた場所はすでに使い尽くされてしまったため、海の中に風車を建てる洋上風力発電に着手しました。「αウェントゥス」と名付けられたこの海上発電所は、世界でも珍しい80メートルもの深い海に建設された発電所で、最寄りの陸地から45キロも離れているため陸地から風車が見えず景観が守られ、日本で問題となっている低周波振動も届きません。
▼空飛ぶ恐竜の着地方法
翼竜の着地跡の化石が初めて発見されました。この化石を調べることによって恐竜がどのようにして空を飛んでいたのかを推測することができます。カリフォルニア大学バークレー校の研究者らの推定によると、翼竜はまず両方の後ろ脚を同時に接地させた後、つま先をわずかに引きずって一瞬後方へ飛びのく。それから再び後ろ脚で降りたようだ。それから翼をたたんで1〜2歩進み、翼の先の前足も使って四つんばいで立ち去ったようです。着地の方法は現在の鳥と似ています。
▼きぼうでX線の観測開始
国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームに取り付けられた全天X線監視装置「MAXI(マキシ)」が観測を開始しました。MAXIは、電力や姿勢制御、通信などの基本的な機能をISSに依存できるため、大型の検出器を搭載し、従来のX線観測人工衛星の10倍の感度を持っています。今後2年間の運用が予定され、超新星やブラックホールと関わりの深いX線新星、ガンマ線バースト、暗いブラックホールや中性子星などを観測します。
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