インターネット科学情報番組



科学コミュニケーター 中西貴之
アシスタント BJ

トップページに戻る番組コンセプト

 このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。
 この番組は週替わりで最新の科学情報をわかりやすく解説しています。番組コンセプトはこちらをご覧ください。>>クリック 
 
 番組を視聴するにはリアルプレーヤーをPCにインストールする必要があります。お使いのPCにリアルプレーヤーがインストールされていない方は、リアルネットワークス社のサイトから無料で再生ソフトをダウンロードすることが出来ます。
 >>無料ダウンロードできるページ

本も書いてます




>>「Mowton(放送終了)」はこちら 

Chapter-32
 ニート彗星、リニア彗星、ブラッドフィールド彗星 [聴くMP3をDL

Chapter-31
 シリーズ学会発表(1) [聴くMP3をDL

Chapter-30
 吉田光由とその著作『塵劫記』 [聴くMP3をDL

Chapter-29
 花粉症は克服できるのか [聴くMP3をDL

Chapter-28
 質量はどこから来るのか [聴くMP3をDL

Chapter-27
 バイオハザードは身近なところにある [聴くMP3をDL

Chapter-26
 御木本幸吉 [聴くMP3をDL

Chapter-25
 サイエンスニュースフラッシュ [聴くMP3をDL

Chapter-24
 多重人格に関する最新の研究成果 [聴くMP3をDL

Chapter-23
 放射線を用いた植物の品種改良 [聴くMP3をDL

Chapter-22
 火星探査車「スピリット」のテクノロジー [聴くMP3をDL

Chapter-21
 酒酔いのメカニズム [聴くMP3をDL

Chapter-20

 サラマンダーはパートナーの浮気を許さない [聴くMP3をDL

Chapter-19
 結核治療薬が高所恐怖症治療に有効 [聴くMP3をDL

Chapter-18
 新聞ニュース斜め読み [聴くMP3をDL

Chapter-17
 数を数える仕組みは男女で異なる [聴くMP3をDL

Chapter-16
 ニッポニアニッポン・トキ [聴くMP3をDL

Chapter-15
 数を数える仕組みは男女で異なる [聴くMP3をDL

Chapter-13
 あくびは親切な人にうつる [聴くMP3をDL

Chapter-12
 試験のストレスでニキビは悪化する [聴くMP3をDL

Chapter-11
 朝型人間・夜型人間は遺伝子で決まる [聴くMP3をDL] 

Chapter-10
 ウィルヘルム・レントゲンがX線を発見 [聴くMP3をDL] 

Chapter-32
2004年4月17日

ニート彗星、リニア彗星、ブラッドフィールド彗星

今週の放送を聴く | ダウンロードする

 オーストラリア在住のブラッドフィールドさんが、2004年3月23日と24日の二日にわたって、25センチメートル反射望遠鏡を用いた観測により彗星状の天体を発見しました。オーストラリアのサイディング・スプリング天文台などの観測によって新しい彗星であることが確認され、ブラッドフィールド彗星と名付けられました。

 この発見に先立ってすでに、2004年の4月下旬から5月上旬にかけて肉眼で観測できる二つの巨大彗星が現れることがわかっており、それらの名称はニート彗星とリニア彗星です。
 まず、4月下旬にブラッドフィールド彗星とリニア彗星が同時にあらわれますが、二つの彗星が同時に現れるのは400年ぶりとなります。そして、5月下旬、リニア彗星トニーと彗星が同時に現れます。南半球では観測に適した条件となりますが、日本ではリニア彗星が地平高度10〜20度までしか上がりませんので、観測は困難かもしれませんが、ほぼ同時期に3つの彗星を肉眼で観測できるというすばらしい天文ショーを体験できそうです。

 彗星同士の天文ショー以外にも今回の彗星接近では二つのショーが用意されています。一つ目は見た目上の惑星直列で、2004年5月14日前後の20時ごろ、4つの惑星とニート彗星が一直線に並びます。このときニート彗星は西の空にあり、背景を蟹座にしていますが、その南よりの高い位置に木星があります。そして北に向かってほぼ45度で下る方向に木星からニート彗星、土星、火星、金星と合計4つの太陽系惑星とニート彗星が一直線に並びます。
 二つ目は5月15日頃にニート彗星は蟹座のプレセペ星団のすぐ脇を通過します。ガリレオの発見したプレセペ星団は双眼鏡で観察するとたくさんの若い星が輝いている様子が見えますが、この星団のわずか西側地平寄りにニート彗星を同時に観察することができそうです。

 さて、今回のニート彗星とリニア彗星の軌道ですが、76年周期で何度も姿を見せるハレー彗星のような楕円軌道ではなく放物線状の軌道を持っていることがわかっています。つまり、今回太陽に再接近した後、太陽から遠ざかっていくのですが、この両惑星は太陽の引力を振り切って宇宙の彼方に飛んでいく種類の彗星です。ハレー彗星が76年ごとに地球にやってくることをハレーロマンスなどという風に表現する人もいますが、ニート彗星とリニア彗星は今回私たちの前に姿を現すのが最初で最後の彗星です。

 また、リニア彗星においては2003年9月に行われた日本のすばる望遠鏡の観測によって水の氷の粒があることが発見されました。彗星から水の氷粒が見つかったのは、ヘール・ボップ彗星に続いて、今回が2例目なのだそうです。彗星の固体部分である「核」は、太陽系が誕生したころ存在していた惑星の元が生き残ったものと考えられていますので彗星核中の氷の研究は太陽系形成期の物理環境を探る上で非常に重要なプロセスです。しかし、彗星に水があるかどうかを観測することは非常に難しい作業です。水星が地球に近づくと観測は容易になりますが、そのころには太陽からのエネルギーで水は蒸発している可能性がありますので、できるだけ太陽から離れた位置にある段階で観測しなければなりません。ところが、遠い距離にある彗星は非常に暗く小さいので、天体望遠鏡に非常に高い解像度が求められるので、これまではハッブル宇宙望遠鏡によるたった一つの成功例しかありませんでした。今回、日本のすばるがハッブル宇宙望遠鏡が成功したヘールボップ彗星よりも100倍も暗いリニア彗星で水の氷の観測に成功したことは、日本の天体観測技術が世界でトップであることを世界に知らしめたことにもなりました。NASAはハッブル宇宙望遠鏡の今後のメンテナンスの中止、事実上の廃棄を検討していますので、宇宙観測における日本の役割はますます大きくなりそうです。なお、2011年にNASAは次の宇宙望遠鏡を打ち上げ予定だそうです。

 さて、最後に今回の彗星を観測方法ですが、彗星はそのほかの単体に比べると見かけの大きさがかなり大きく、彗星の頭の部分の見かけの大きさは月ほどもありますので、彗星の観測にもっとも適しているのは天体望遠鏡よりもむしろ双眼鏡です。倍率は10倍程度が適当で価格は3万円から4万円程度です。また、バードウォッチングに使用するフィールドスコープも彗星の観測にはお勧めです。彗星を観測できる日時と方角については文部科学省国立天文台のWebSiteや科学雑誌ニュートンなどから情報を入手してください。
 そのほか全国の天体観測所やこども科学館などでイベントも企画されているようですのでお住まいの地方自治体のWebサイトからそういった施設を探してみてください。