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2009年9月26日
Chapter-257 早起き遺伝子と恐がり遺伝子

 早起き遺伝子

 健康な人が健康に早起きするのは早起きは三文の徳と言うほどよいことですが、体内時計が前にずれてしまう病気が原因で早起きをせざるを得なくなると、一種の睡眠障害として扱われ、家族性睡眠相前進症候群といいます。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが家族性睡眠相前進症候群の患者の遺伝子にどのような変化が起きているのかを調べたところ、体内時計に関係する「ピリオド2」と名付けられた遺伝子が特徴的に変化していることが確認されました。

 ピリオド2遺伝子には、自分自身の働き具合を活性化するスイッチと抑制するスイッチの両方が付いていて、両方のスイッチを入れたり切ったりして体内時計が調整されています。2つのスイッチのうち、遺伝子を活性化する側のスイッチが故障してしまったのが発症の原因であるようです。

 遺伝子はタンパク質の設計図ですので、今回の発見は、ピリオド2遺伝子が作り出すタンパク質を増やすような治療を行えば家族性睡眠相前進症候群は治療が可能であることを示唆しています。

恐がり遺伝子

 恐怖心がなぜ起きるのかということについては科学的にはよくわかっておらず、一般には危険から身を守るためともいわれています。

 恐怖は脳の扁桃体という部位で認識され、扁桃体の機能が低下すると恐怖を感じなくなることがわかっています。一方、恐怖遺伝子の存在も古くから知られていましたが、恐怖遺伝子のどのような変化が扁桃体の機能にどのように関わり、どのように恐怖心に対する影響があるのかはわかっていませんでした。

 様々な遺伝子の改変を行ったマウスについて、恐怖心に変化が現れるかどうかを網羅的に調べたところ、神経細胞の成長を司るカルシニューリンという酵素の遺伝子が破壊されたマウスは扁桃体の働きが強まり恐がりになることがわかりました。また、αCAMK IIという遺伝子が破壊されると脳の機能に様々な変化が生じ扁桃体の機能が低下すると共に怖いもの知らずの凶暴なマウスになってしまうことも発見されました。

 まだ人間での研究はほとんど行われていませんが、恐怖に関連する遺伝子はその人の性格の決定に大きく関わっているはずで、お化け屋敷に入ったときの反応の違いも遺伝子で説明できるかもしれませんし、経済活動においてどこまでリスクをとって行動できるかについても遺伝子で理解できる可能性もあります。

ちょきりこきり
今日使える三行科学

▼脂肪組織からiPS細胞の作成に成功
・中高年の脂肪吸引手術で得た大量の余り物脂肪細胞からiPS細胞が作れることを発見。
・しかも、皮膚細胞から作るより20倍も効率が良かった。
・脂肪組織では山中教授がiPS細胞の作成に使用した4つの遺伝子のうち、2つが最初から活性が高いので効率がよいようだ。

▼月面はマグマの海だった
・日本の月探査機かぐやが深くえぐれたクレーターの内部の岩石組成を調べた。
・その結果から月の地下はマグマが固まってできた岩石で覆われていることがわかった。
・誕生後間もない月はどろどろに溶けたマグマのボールだったことの証拠となる。



バックナンバー
   
Chapter-256 グラフェン
Chapter-255 地球温暖化とちょこっと発電 
Chapter-254 水素から電子を取り出す新しい触媒の発見 
Chapter-253 水にも構造がある 
Chapter-252 食べものと体内時計の関係
Chapter-251 金縛りについて
Chapter-250 国際宇宙ステーション日本実験施設きぼう  
Chapter-249 脳神経科学の話題  
特別番組 山口県立山口図書館 ちょこっとサイエンス講座「宇宙人はなぜそのヘンを歩いていないのか?」 
Chapter-248 サリドマイドの生化学 
Chapter-247 太陽系外惑星探査の歴史と現状 
Chapter-246 氷核活性細菌
Chapter-245 一卵性双生児の最新科学 
Chapter-244 ダークマターとダークエナジー
Chapter-243 フローティングタッチディスプレイ
Chapter-242 トランスジェニックコモンマーモセット
Chapter-241 食感とおいしさの関係
Chapter-240 獲得形質の遺伝に似た現象
Chapter-239 マルチバースと人間原理
Chapter-238 マルチバース/ハッブル宇宙望遠鏡修理中
Chapter-237 近頃の恐竜の話題  
Chapter-236 レールガン実用化の歴史 
Chapter-235 ゴッホの絵画に隠されていた黒猫の発見
Chapter-234 バージェス頁岩発見から100年
Chapter-233 宇宙に吠える巨大モンスター
Chapter-232 産総研が開発したHRPシリーズの最新型ロボット
Chapter-231 他人の不幸は蜜の味
Chapter-230 最近の宇宙の話題
Chapter-229 ジョージ・ガモフの「不思議の国のトムキンス」 
Chapter-228 ヒラメとカレイの目の位置を決定する仕組み
Chapter-227 シャドーバイオスフィア 
Chapter-226 ジェットコースターの楽しみ方
Chapter-225 再び注目される超伝導
Chapter-224 ピンチになると活躍する遺伝子 
Chapter-223 アルツハイマー病に関する新たな発見

>> 「Mowton(放送終了)」はこちら

Science-Podcast.jp 制作






科学コミュニケーター 中西貴之(メール
アシスタント BJ

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[この番組の担当は・・・]

ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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