【iPad アプリ発売開始】 【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】 ESAの地球磁気圏探査衛星「クラスター2(Cluster II)」は同型の衛星4基がペアを組んで地球の磁場を観測します。衛星は200年7月と8月に2基ずつが打ち上げられました。4基の衛星には愛称がついていて「サンバ」「タンゴ」「ルンバ」「サルサ」といいます。4基がそれぞれに搭載された11種類の観測装置で地磁気の細かな構造を観測することができます。 打ち上げ時の重量は1基1.2トン。軌道は極端な楕円形で地球に再接近したときの地球との距離は2000km、最も離れたときは13万kmとなります。地球と月との距離は36万〜41万kmですので月までの距離の1/3に到達することになります。この軌道を54時間かけて1周します。ミッションは現時点では2012年12月31日までが想定されていますが、当初の計画は2010年までで、衛星の調子が良いために現在延長ミッションが行われています。 地球の大気圏の最上層部から、少なくとも月までの距離の4分の1まで冷たいプラズマの雲が広がっていることが、欧州の人工衛星クラスター2が収集したデータを解析することによって明らかになりました。 冷たいプラズマとは動きの鈍い荷電粒子のことで、大気圏と宇宙空間の境目で太陽光が大気成分の原子から電子をはぎ取り、プラスの電荷を帯びた中心部分の原子核だけが残されることによって作り出されます。これらの粒子は宇宙天気にも影響を与えているのではないかと疑われていました。というのも、たとえば、2012年1月23日に発生した太陽フレアとそれに起因する磁気嵐の場合、太陽で嵐が発生した結果、冷たいプラズマの仲間の高速の荷電粒子が大量に地球を襲い、いろいろな現象が起きることから、地球由来の冷たいプラズマの雲も宇宙天気との関連が推定されていました。 宇宙天気とは、太陽フレア、太陽プロトン現象、磁気嵐等による地球周辺の宇宙環境の変化のことで、これらの状況を観測・把握し、その発生およびそれに伴う影響を予測しようという試みを宇宙天気予報と言います。磁気嵐によって、人工衛星の電子機器の損傷、通信障害、電磁誘導による送電線の異常電流の発生、宇宙空間にて作業する宇宙飛行士の健康被害などの悪影響が発生します。宇宙天気予報によりこれらの被害が軽減されることが期待されています。 地球の上空約100キロにある電離層については、何らかの冷たいプラズマの存在が既に指摘されていました。しかしさらに上空、2万〜10万キロの範囲にある粒子の雲に着目した研究者は、これまで稀でした。そこで、この冷たいプラズマを検知するため、欧州宇宙機関(ESA)の探査機、クラスター2から得られたデータに存在する特異性が分析されました。 クラスター2は極端な楕円軌道で地球を周回する4つの人工衛星の集まりです。最も地球から離れた時、衛星は地球と月との距離の半分の地点にまで達します。ここまで離れることで、太陽から発せられる熱い電粒子の影響を含め、地球の磁場や電気的活動を徹底的に調査、監視することが可能になります。このデータから地球の磁場の果てに近い領域では、冷たいプラズマが全荷電粒子の50〜70%を占めていることが突き止められました。 この発見により、今後は予想以上に大量に見つかった冷たいプラズマを考慮に入れた新しい宇宙天気モデルを作る必要があると考えられています。現時点では、この冷たいプラズマが太陽嵐などにどのような影響を与えているのかはまったくわかっていません。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
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