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Chapter-33 今週は食感と脳の嘔吐に関する論文を紹介します。この研究は将来、食品に対する好き嫌いのメカニズムを解明したり、高い機能を持った食品の開発につながるかもしれません。 私たちは、味や食感、使われた香辛料、さらには温度といったさまざまな要因を総合的に判断して食べ物の好き嫌いを決めています。これら要因の中で、食べ物の味や香り、あるいは温度が脳のどの部分を刺激するかという点についてはこれまで数多くの研究がなされていましたが、食感と脳の反応の関係についてはほとんど解明されていませんでした。 そこで、食感が脳に与える影響と脳の反応について研究するために、イギリス・オックスフォード大学研究チームは空腹な12人の被験者に食感の異なる食べ物をチューブから口の中に送り込みさまざまな触感の食べ物が口の中に入ったときの脳の反応を機能的磁気共鳴画像装置(f-MRI)を使用して調べました。 その結果、粘りのある食べ物によって活性化された脳の領域は、ある種の味によっても同じように活性化することが明らかとなりました。このことは、口に入っているものを脳が認識する場合に、味と食感の両方が複雑に関連していて、味は脳のこの部分、食感は別のこの部分と単純に脳の機能として分類することが出来ないことを示唆しています。 脂肪分が口に入ると、帯状回という脳の領域が活性化します。帯状回は楽しい経験をした時にも活性化することがわかっており、このことは、食べ物によって、脳に存在する「楽しいスイッチ」が直接ONになることを示唆しています。 食品会社は、今回発表されたものと同様の試験方法を使って、食品や飲料の優劣を科学的に評価することを試みようとしています。このような方法はこれまで、ボランティアによって経験的に好き・嫌いと判定されていた食品の性質を脳の反応する部位によって判定する、例えるなら「楽しいスイッチ」をONにする食べ物、「リラックスするスイッチ」をONにする食べ物など、これまで、限られた人数のボランティアの感覚で判断していた食べ物と人間の感情との関係をより科学的に導き出すことができます。 さらに研究が進めば、食べ物に対する脳の反応に関する知識を使って、例えば冷やさなくても冷たく感じられる飲料水、といった新製品や脳をごまかして、これまで存在しなかった新しい味覚だと感じさせるような食品も出来るかもしれません。 また、なぜ特定の食べ物が、おいしくて、癖になってしまうのか、そのメカニズムが解明されれば肥満人口増加の一因とされる高カロリー食品に対する人気が高い理由を解明し、その対策を立てるなど、私たちの健康に有用なデータの利用も可能になります。
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