インターネット科学情報番組
このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。 [今週の Openig Talk] ■ [最近の放送]>>バックナンバー [この番組の担当は・・・] |
Chapter-76 テザー衛星でスペースデブリを掃除する 地球周回軌道上にはこれまで打ち上げられたロケットや人工衛星の残骸が大量の宇宙ゴミ・スペースデブリとして浮遊しています。これらが運用中の人工衛星や宇宙ステーションに衝突する速度はピストルの弾丸の数十倍、毎秒一〇キロメートルにも達し、その破壊力は一〇センチメートルのデブリの衝突で衛星は破壊されるという研究者もいます。確認されているスペースデブリは一〇センチメートル以上のものが七〇〇〇個、一ミリメートル程度のデブリなら数百万個もあります。 推進装置でデブリを除去するのは燃料確保の観点から困難で、現在精力的に研究されているのがエレクトロダイナミックテザー衛星です。テザー衛星は親衛星と子衛星が金属製のひも(エレクトロダイナミックテザー)で結ばれ、普段は子衛星とテザーは親衛星に収納されています。デブリに子衛星を密着させテザーを伸ばすと地球の磁場の中を金属テザーが移動することによって電流が流れ、電流と磁場の相互作用でローレンツ力が発生し、進行方向逆向きに力が加わります。減速によって、遠心力よりも重力の方が勝るようになりデブリは軌道を下げようとしますので、この時に子衛星をデブリから切り離すとデブリはそのまま大気圏へ落下します。 発生した電流に対して逆向きの電流を流すと衛星は軌道を上げます。このように、燃料を使わずにデブリの落下と自身の軌道制御を行うことができます。エレクトロダイナミックテザーは磁場から電源を取り出すことによって宇宙空間での燃料問題を解決しようという発想で古くから検討されていましたが、発生する高電圧に耐えるテザーの材料がみつからず、ローレンツ力によって乱れる姿勢をどう制御するのかなどの問題がありました。近年、材料や制御技術の発展によって再び着目されている宇宙技術です。 |