2009年10月10日
Chapter-259 iPS細胞の応用研究
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iPS細胞を使った血液の生産
輸血には感染症の心配や、安定供給の問題があります。
患者の骨髄から採取した造血幹細胞を培養すれば、その患者専用の血液を作り出すことができる可能性はありますが、未だ成功例はありません。この問題を解決するための一つのアプローチとして、ES細胞の応用が考えられています。ES細胞は臓器食の場合は適合性の問題が潜在していますが、細胞核がない赤血球や血小板で適合性の問題は生じないとされています。けれど、遺伝子異常などの理由で血小板を継続的に輸血する必要がある患者では組織適合性をきちんと一致させる必要があります。
ES細胞の持つ問題点をも解決するiPS細胞からの血液生産は2009年2月にiPS細胞から血小板を作り出すことに成功しました。今後、安全性がと効果が確認され、現在は高額なコストの問題も解決できれば、献血に代わる輸血用血液の供給方法として有望です。
iPS細胞によるアイバンクの代替
角膜移植は比較的一般に行われている移植治療の一つです。移植するための角膜は多くがアイバンク制度によって供給されますので適合性や、需給のアンバランスが問題となっています。
角膜は常に新しい細胞が作り続けられ1週間ほどの周期で新陳代謝しています。新しい角膜細胞は角膜周辺の輪部という組織に存在する幹細胞です。したがって、角膜が障害を受けても、輪部に問題が起きていなければ自然に治癒する可能性が高くなります。一方、輪部が損傷を受けたり異常の原因になっていたりすると角膜は自然治癒せず、失明に至ります。1999年に角膜上皮幹細胞の移植によってこうした症例も治療可能であることが示され、現在は輪部の断片を正常な輪部に育て培養上皮細胞シートを作って移植する研究が行われています。
ただし、この方法研究は正常な輪部を培養することによって角膜を再生しようとするものですので輪部が完全に破壊されたような重篤な疾患や損傷の場合には対処ができません。そこで、考えられているのがiPS細胞からの再生です。すでに実験動物ではiPS細胞から作った角膜上皮細胞をシート状に培養する研究が進んでいます。
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