2009年10月24日
Chapter-261 30分でわかるノーベル賞2009
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ノーベル生理学・医学賞「テロメアとテロメラーゼ酵素が染色体を保護する機序の発見」
テロメアは命の回数券と呼ばれますが、拙著「人を助けるへんな細菌すごい細菌」の183ページにテロメアとテロメラーゼについて、イラストで解説しています。
テロメアはある一定の配列のDNAの並びが何度も繰り返しになってつながっている特徴的な構造を持ちます。染色体の末端にキャップのように結合し、細胞が分裂するごとにだんだん短くなります。何度も細胞分裂を繰り返しある短かさになるとそこでその細胞は分裂を停止して、年老いてゆくだけの状態になります。ところが、細胞にはテロメアを伸ばす酵素であるテロメラーゼがあることが発見されました。
ガン細胞が死ぬことなく細胞分裂の暴走状態にあるのはテロメラーゼが活発に活動し、細胞分裂によって失われたテロメアが補充されているためです。従って、ガン細胞のテロメラーゼの研究は抗ガン剤の開発につながることが期待されています。
※テロメアについては、拙著「人を助けるへんな細菌すごい細菌」の183ページにイラストで解説しています。
ノーベル化学賞「リボソームの構造と機能の研究」
リボソームは細胞内で機能を分担する細胞内小器官の一つといえます。リボソームの役目は遺伝子(mRNA)を読み取ってタンパク質を作り出すことです。そのため、リボソームはタンパク質の合成工場と呼ばれることもあります。タンパク質は20種類のアミノ酸が一列に連結して細長いひものようになって作り出されます。
※タンパク質の構造については、拙著「食べ物はこうして血となり肉となる」の14ページにイラストで説明しています。
リボソームは50種類以上のタンパク質と数個のRNAが複雑に組み合わされた分子で、その構造の解明は困難を極めましたが、X線構造解析という手法を用いて20年以上をかけて構造の解明が行われました。リボソームの構造が解明されたことによって、抗生物質の作用メカニズムをより詳細に研究することができるようになりましたので、この成果を用いて今後もより効果的な抗生物質を作り出すことができると考えられています。
ノーベル物理学賞「光通信を目的としたファイバー内光伝達に関する画期的業績」「撮像半導体回路であるCCDセンサーの発明」
ガラス繊維の中に光を通して情報を伝達しようという光ファイバーのアイディアが生まれたのは19世紀のことでした。けれど、ガラスを引き延ばして作ったケーブルの中では光は減衰してしまうため、情報を光にのせて届けられる距離はわずか20メートル程度でしかありませんでした。けれど純度の非常に高い石英を光ファイバーの材料に使うことで100キロ以上も光の情報を伝えることが可能であることが発見され、1970年代にアメリカのコーニング社が純度の高い光ファイバーを製造することに成功し、情報を1キロ離れたところに届けることに成功しました。
一方、CCDは1970年に発表された光を電気に変換する方法で映像を撮影できる素子です。CCDのアイディアで画期的だったのは、受光素子で作り出した電気信号に変換し、これをバケツリレーのように隣の素子に次々に渡していく仕組みに思いついたことでした。このことによって、平面で受け取った光の情報をコンピューターなどで処理しやすい一列に並んだ情報に変換することができました。世界で初めてCCDを実用化したのはパナソニックで1979年に白黒CCDカメラが市販されました。カラーのCCDが登場したのはそのわずか1年後、これを実用化したのも日本のメーカーでソニーでした。
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