Chapter-123
日本製ロボットが災害現場で活躍する姿を早く見たい!!
2006年8月19日 (前回の放送|次回の放送)
今回の番組は(スタッフの)夏休みスペシャルとして対談形式になっています。
以下は番組ダイジェストです。
全編は番組でお楽しみ下さい。(無料)
また、有料メールマガジン「ヴォイニッチの科学書プレミアム」では全文テキストを配信しています。
出演者
よう(くりらじスカイプパーソナリティ)
BJ(くりらじ局長)
おびお(ヴォイニッチの科学書お世話係)
おびお 6月24日に放送したChapter-115でこういう話題を紹介しました。
「アメリカ、カーネギーメロン大で5〜10年後の実用化を目指して、ヘビ型
人命救助ロボットの開発が行われています。このロボットはは瓦礫の間を
縫うように動き回り、下敷きとなった生存者らを捜索する人間の腕ほどの
大きさのロボットで、カメラとセンサーを搭載し、小型モーターを遠隔操
作して動きます。」
BJ やりましたねぇ。
おびお このときには、日本だってロボットたくさんあるんだから・・・
BJ 早く災害に使えるようになると良いねぇ、みたいなお話をしました。
おびお ということで、今回はくりらじの人気番組「いちひめ、にたろう、さ
んおねぇ〜」を中心にスカイプパーソナリティとして活躍しているようさ
んが下関市の第2スタジオに来ていますので番組に参加していただいてこ
のあたりについてトークしたいと思うのですが
BJ なぜ、ようさんなのかっていうのは・・・
おびお それは話してもらっても支障ないんですか
よう それは大丈夫です
おびお ではそのあたりからお話をお願いします
よう 私は大学院時代にロボットの研究をしていました。ロボットの研究でも
国内では最先端を行っている当時電子技術総合研究所で学生の身
分でお手伝い程度ですが仕事をしていました。そう言うところで実際のロ
ボットの研究の現場を見ていて、ヴォイニッチで最初に「何で現場に行か
ないんだ」って言う話しを聞いたときに、「いやそれはムリですよ」てい
う感想を持ちました。
おびお あのときは「援竜」の様なものを災害現場に何台も持って行くのは大
変だけど、HALだったら航空機の座席一人分に一台ずつくらい乗るんじ
ゃないかって言うお話をして、これで助けに行けたらいいのにね、ってい
うお話をしたんです。HALっていうのは外骨格型っていうか
BJ パワードスーツ的なね
おびお ロボットスーツHALなのですが、こちらもだいぶ前にこの番組で紹介し
たことがあります。筑波大学大学院システム情報工学研究科の山海嘉之
教授が開発されたもので2004年6月に設立されたサイバーダイン株式会
社ということろで実用化が目指されていますね。今はボランティアの方で
身体の不自由な方のサポートを研究しておられるようです。
BJ サイバーダインって言う会社は日本の会社なの?
おびお もちろん山海教授が設立された会社なので
BJ じゃ、この教授はジョークのわかる方なんだ
よう そうですね。HALとかね
BJ HALは2001年宇宙の旅に出てくるコンピューターの名前ですよね
よう で、サイバーダインはターミネーターを最初に作った会社がサイバーダ
インでしたね
おびお ここで実用化の研究をしているということなんですが、着るロボット
というとちょっとニュアンスが違いますでしょうか。外側のHAL自体が身
体を支えているので、着るというと背負い込むようなイメージがあるので、
まぁ、小さいですが乗り込むという感じで良いんですかねぇ
よう その方がイメージとしては近いかもしれないですね
BJ 大げさな大リーグ養成ギブスみたいな
よう 私が思ったのはイメージ的にはSF的にはパトレイバーに近いかなと、と
いうイメージを持ちましたね
BJ ロボットだけど装着している感じに近いという、そういうロボットという
か外骨格っていう感じですね
おびお でHALのHALなんですがHybrid Assistive Limb
の略で、ハイブリッド
なんですがこれはロボットといっても純粋に自立的に動いているのではな
くてそれを装着している人の意志を神経信号という形で受け取って動くと
いうことなので、私たちが例えば手を動かすときに神経細胞を流れるのは
電気信号なんですが、神経細胞の中を手を動かす情報が伝わるんですが、
わずかですが皮膚の外側も伝わっている、と。神経細胞というのはもちろ
ん皮膚よりも内側にあるんですけど、一部は皮膚の表面を伝わるのでHALは
皮膚の表面を伝わる電気信号を使って動くということで・・・
BJ それを使って動くんだ
よう 筋電っていうやつ・・・
BJ 筋電?
よう 義手の研究で筋肉を流れる電流を使った義手というのがあって、例えば
肘から先がない人がその先に筋電義手というのをつけて腕の先のところに
マジックハンドのようなものをつけてそれを握るとか開くとか言う動作を
筋電を使って行うようなものがあります。
BJ 握るとか開くとか、そのマジックハンドのようなものを動かせるというこ
となんですか
よう そうですね、その残っている部分の筋肉を使って自分の手があったとき
と同じような動作をすると、もちろんその人自身の学習などが必要なんで
すがそう言うこともできるようになっています。
おびお 研究の最初の段階では研究室の学生さんが装着していたらしいん
ですけど、ある時に交通事故で下半身が不自由になった一般の方に装着す
る試験を行ってある程度の成果が出ている、と。自分では立ち上がること
も難しい方だったそうですが、自分で立ち上がろうとすることによって神
経細胞に電流が流れて、それを拾ってHALが、あ、この人は立とうとし
ている、座ろうとしているっていうのを感じ取ってあらかじめプログラム
された動作をする・・と。筋肉の動きよりも0.04秒から0.1秒くらいHALの
方が早く動くようなチューニングをしてやると普通に使うことができるら
しいです。ロボットが独自の判断で動く自立的な部分と人間の意志で今か
ら座りますよとHALに指示を出すようなハイブリッドしているような関係に
なっているようですね
BJ すごいな
おびお 思ったのはこれが180キロも荷物を持ち上げることができるのだったら、
良く災害現場で重機があればいいのに、っていう話しをしばしば聞きますが、
重機を自衛隊の方が運ぶ際には大きいので輸送機に何台かしか乗らないで
すよね。でもHALが量産できれば、飛行機のイスに座らせていけばすごい数
を送れるので一台では180キロなんだけれどもHALを着た人が4人集まれば700
キロくらいのものを持ち上げられるから、っていう発想をしたんですよね、
それがやはり専門家の方から見ると難しい、と。
BJ がれきといってもどんなでこぼこで、誤作動じゃないけどそう言うことを
起こす可能性もあるわけで、一番問題なのはオペレーターの問題とかね
よう そうだと思います
BJ 災害現場に行くプロの人たちがそれに慣れてないと、という感じはありま
すね。だから大学の研究者の方々がいきなり命を助ける災害現場に乗り込
んでっていうのは抵抗があるでしょうね
よう これを本当に災害現場に持って行こうとしたら順序としては研究者が災
害現場に行くよりはレスキュー隊がそれを自分たちがそれを使うんだとい
う意志を持ってやっていかないとそれは実現できないのではないかと思い
ますよね。
BJ そうだよね、消防の方もそういう研究室みたいなのを作ればいいのにね
よう 多分あると思います。ロボットの研究をしているかどうかはわからない
ですが科学的な研究はしていると思います。そこの可能性の一つとしてロ
ボットスーツみたいなものが入ってくれば、もしかしたらそう言うところ
で活用できるかもしれないですね。
BJ それはいいですね。子供たちががれきの下に埋まっているところにそうい
うロボみたいなのが着て、がーんと助けたりする姿を見るとオッと思いま
すよね。オレもレスキューに入りたい、って思いますよね。でもHALがすで
にそこまで実用化できているならもうすぐって言う感じがするようねぇ、
あともう一歩だ、みたいな
よう 私がHALを初めて見たのは2000年くらいだったと思うんですが、その後5
年くらいの間にかなり進歩していると思うんですね。なのでこれからあと
5から10年の成熟があって多分本当に現場で活躍できるんじゃないでしょう
か
おびお まだそんなにかかるのかぁ
BJ でも、考えてみれば5年10年だよ、10年後には道路の工事をするおじさんた
ちが着て手で穴掘ってるかもしれないよ
おびお いや、ロボットスーツを着たからって、わざわざ手でやる必要はなく
て、やっぱり道具を使った方が良いんじゃないですか
BJ そりゃそうだね。でもすごいよね。確かにロボットよりはHALのようなもの
の方が近道のような気がするよね、判断は人間が下して、その微妙なロボ
ットを遠隔操作するって言う微妙なコントロールが難しくなるだろうから、
それよりはHALのような直感的なインターフェイス持っているものっていう
のがやはりまずは第一の実用化に近いものなんだろうねぇ。
[最新科学おもしろ雑学帖で今回の番組関連する話題は]
155番 二足歩行はなぜ可能になったのか
156番 人間の出せない力をサポートする
159番 ロボカップサッカー
161番 ロボットの心を作り出す