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科学技術コミュニケーター 中西貴之(メール
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エンディング曲

 今週、番組のエンディングに流れている曲は Pizzi Puty の「Family Peace」です。CD未収録。Pizzi Puty の DVDはアマディオンプラスで発売中です。



 このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
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■翔泳社”ポッドキャスティング入門”でオススメ番組として紹介されました。
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[バックナンバー]

Chapter-110 夫婦仲とケガの治り・色覚進化のきっかけ 
Chapter-109 サイクリック宇宙論 
Chapter-108 躁鬱病モデル・軌道エレベータ 
Chapter-107 あかりときらり 
Chapter-106 ブラックホールは3種類
Chapter-105 水素社会の実現に向けて 
Chapter-104 冬眠のメカニズム 
Chapter-103 抗老化ホルモンとは? 
Chapter-102 今週の最新ニュース 
Chapter-101 今週の最新ニュース 
Chapter-100 「はやぶさ」最新情報とプルサーマルについて
Chapter-99 うなぎの一生について 
Chapter-98 H-IIA 9号機打ち上げ成功
Chapter-97 カーボンナノチューブの商業利用
Chapter-96 天の川銀河の構造に関する新発見
Chapter-95 バイオマス発電
Chapter-94 陸域観測技術衛星「だいち」
Chapter-93 自然科学の話題を3題
Chapter-92 「はやぶさ」「LHC加速器」最新情報
Chapter-91 脳のにおい識別エビデンスを解明
Chapter-90 平成17年版 科学技術白書を読み解く 
Chapter-89 サイエンスニュースフラッシュ 2005年12月
Chapter-88 惑星探査機が謎の減速 
Chapter-87 サイエンスニュースフラッシュ 2005年11月 
Chapter-86 学ぶほど頭の良くなる仕組みがわかった 
Chapter-85 免疫に関する新発見
Chapter-84 第2次ロボットブーム
Chapter-83 サイエンスニュースフラッシュ 2005年10月
Chapter-82 2005年ノーベル化学賞
Chapter-81 2005年 ノーベル医学生理学賞
Chapter-80 ロボットスーツ HAL
Chapter-79 アスベスト被害はどのようなものか
Chapter-78 FASTECH360 のテクノロジー 
Chapter-77 人類の進化について  
Chapter-76 テザー衛星でスペースデブリを掃除する 
Chapter-75 ホエール・フォールの不思議な生態系 
Chapter-74 アクチビンによる発生分化 
Chapter-73 シリーズ人工衛星「スロッシュサット・フリーボ」 
Chapter-72 太陽系誕生の謎に迫れ・ディープインパクト
Chapter-71 オゾン層の現状
Chapter-70 刺さないミツバチの完成 
Chapter-69 量子テレポーテーション 
Chapter-68 究極の再生治療 他 
Chapter-67 慢性疲労症候群 
Chapter-66 3500年前のミイラ 
Chapter-65 炭酸飲料好きも遺伝子が決める  
Chapter-64 英語文法中枢   
Chapter-63 シリーズ人工衛星「JWST」     
Chapter-62 ヒトの脳の進化は特別な出来事だった 
Chapter-61 延命薬はできるのか? 
Chapter-60 天気が悪いと腰が痛い・・・は本当?
 
Chapter-59 宇宙ラーメン  
Chapter-58 最新の宇宙探索成果  
Chapter-57 犬ががん検診をする時代が来るかも  
Chapter-56 ドクターイエローのテクノロジー  
Chapter-55 タイムマシンを作る  
Chapter-54 青いバラ  
Chapter-53 夢でシミュレーションする私たち  
Chapter-52 超高速インターネット衛星 WINDS 
Chapter-51 ビールに放射線防護作用が  


>> 「Mowton(放送終了)」はこちら

[この番組の担当は・・・]

ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

[今週の関連書籍]



Chapter-111
・プリオンタンパク質に関する研究の最前線

2006年5月27日 (前回の放送次回の放送

[プリオンタンパク質に関する研究の最前線]

 プリオンとはタンパク質を意味する protein と感染性を意味する infection を合わせた造語で発見者でノーベル賞受賞学者のプルシナーによって提唱されました。

 プリオンタンパク質は様々な動物の体内に存在していますが、もともとの形である正常型と、タンパク質を構成するアミノ酸でできた鎖の折りたたまれ方が変化した異常型があります。異常型プリオンタンパク質は様々な病気の原因であると考えられています。それらは人ではヤコブ病、プリオン病、クールーなど、牛ではBSEと略される牛海綿状脳症、羊ではスクレイピー、その他、シカやサル、猫などでも異常型プリオンタンパクが関係していると思われる病気が見つかっていて、発症する動物種ごとに異なる名前が付いていますが、これらすべてがプリオン病で総称して伝達性スポンジ状脳症といいます。

 正常型プリオンタンパク質についてはあらゆる動物のあらゆる臓器に含まれているにもかかわらず、その役目は明らかになっていません。異常型プリオンタンパク質が原因であろうと思われる病気についてもまだまだ謎の部分が多く、正常型プリオンタンパク質の機能を知ることによってこれが異常型となった病気のメカニズムも解明できるかもしれません。

 タンパク質はアミノ酸が一列につながったものですが、ある決まった形に折れ曲がってコンパクトにまとまっています。これを立体構造と言いますが、この立体構造はタンパク質の機能を決定する役目を担っていて、アミノ酸の並び方と立体構造の特徴の両方によって、アルコールを分解したり、脳からの情報を伝達したりすることができます。何らかの理由でこの立体構造が異常になると、それは本来の機能を失うだけでなく、場合によっては予期せぬ働きをすることがあります。このことはプリオンタンパク質にも当てはまります。

 90年前に発見されたヤコブ病は何の症状も出さずに脳を破壊しいったん発症すると100パーセント死に至る病気ですが、これは正常プリオンの立体構造が異常になっていることが疾患と深く関わっていることがわかっています。また、クールーと呼ばれる疾患も同様に脳や神経が破壊され100パーセント死に至る病気ですが、ニューギニアで1950年代まで行われていた死んだ人を弔うために死者を食べる食人習慣によって広まることが特徴的な病気です。

 これらの病気を引き起こす異常型プリオンタンパク質と正常型プリオンタンパク質の違いは立体構造だけです。正常型プリオンタンパク質はαへリックスと呼ばれる螺旋階段のような構造を多く含み、この螺旋階段がスプリングのような効果を生んでぐにゃぐにゃと構造が柔軟で水に溶けやすいことが特徴です。異常型プリオンタンパク質の立体構造はまだ正確にはわかっていませんが、βシートと呼ばれる板のような平らな構造を多く含んでいるのではないかと予想されています。

 正常型プリオンタンパク質の機能について、多くの研究がなされており、正常型プリオンタンパク質と関係があると報告されている物質には銅、脳細胞の繊維、アポトーシスに関連する物質、脳内で情報伝達に関わる物質など、多くのものがあります。ただし、これらは試験管内で混ぜ合わせればくっつくという程度の結果で、体の中でどのような物質が正常型プリオンタンパク質と関わっているかはわかっていません。

 体の中で正常型プリオンタンパク質がどこにたくさんあるかと言えば、タンパク質を作るときの鋳型であるmRNAの量で見ると脳が最も多く、次いで、精巣、胎盤、心臓、肺などに多く存在していることがわかっていますが、実際には体内のほとんどの臓器で正常型プリオンのmRNAは存在しているようです。

 では、そこでどのような機能を担っているのかと言えば、様々な説があって、未だよくわかっていません。ある報告では細胞内のラジカルを補足する Super Oxide Dismutase (SOD)の活性をコントロールしており、なおかつ、プリオンタンパク質自身も抗酸化活性を持っていて神経の保護に関わっているとされました。その理由はSODが機能を発現するためには銅イオンをタンパク質の中に取り込むことが必須だからです。しかし、一方ではプリオンタンパク質を欠損させたマウスにおいてもSODの活性は通常のマウスと変化がないことも報告されていますし、カエルの正常プリオンタンパク質には銅イオンを結合する部分が無いため、正常プリオンタンパク質が銅と結合することはさほど重要なことではないようにも思われます。

 さらにマウスを使った実験でプリオンタンパク質の遺伝子を破壊してもマウスの誕生や成長には何ら影響を及ぼさないこともわかっています。ただ、このことは、だから正常プリオンタンパク質は何の役目も持っていないというのではなく、正常プリオンタンパク質の持つ機能が重要であるが故に、バックアップ機能が充実していて何らかの補償機能が働いて異常がないように見えるのであろうと思われています。なお、当然のことながら、プリオンタンパク質遺伝子を破壊したマウスは異常型プリオンタンパク質の元になる正常プリオンタンパク質が無くなるのでプリオン病にかからなくなります。
 また、アポトーシスとの関連についても、正常型プリオンタンパク質がアポトーシスを阻害して神経細胞を守っているという報告が出る一方で、試験管内では正常プリオンタンパク質が過剰になるとアポトーシスが進行するという報告もあります。また、メカニズムは報告されていないもののリンパ球の機能を制御しているという説もあります。

 また、正常プリオンタンパク質の構造からは別の説が出ています。正常プリオンタンパク質は片方の端からGPIアンカーと呼ばれる碇のような構造が伸びています。GPIアンカーの先端は細胞膜の脂分でもあるリン脂質になっていて、正常プリオンタンパク質はこのGPIアンカーのリン脂質部分を細胞膜の中に突っ込んで本体は細胞の外側にぶら下がっているようです。この構造を持つことによって正常プリオンタンパク質は細胞膜表面を滑るようになめらかに移動することができるはずで、この構造はホルモンや神経などの情報伝達に大きく役立つと考えられており、実際、すでに機能のわかっているGPIアンカーを持つ普通のタンパク質は情報伝達や細胞膜の構造の制御を行っています。ただし、正常プリオンタンパク質がその他大勢のGPIアンカー型タンパク質のように情報伝達を行っているという証拠は得られていません。

GPIアンカーで高速移動

 このように正常プリオンに関する研究はどのような方向からどのような手法で検討を加えるかによって様々な現象を観察することができ、いったいどれが本来の細胞中での機能なのか全くわからない状況にあるのが現状です。

 さらに、現在主流であるプリオン説への異論も唱えられ続けています。プリオン説に反対する研究者らは遺伝子を持たないタンパク質が伝染・増殖することをチプリオン説の最大の問題点として指摘していましたが、現象的には異常型プリオンタンパク質の増殖は確かに起きています。現在指摘されている問題点は、純粋で活性のある異常型プリオンタンパク質を健康な実験動物に導入しても病気が発症しない点と、正常型プリオンタンパク質が異常型プリオンタンパク質に変化するという最も重要なプロセスのメカニズムが解明されていない点などです。その問題点をうまく回避できる説としてウイルス説があります。プリオンタンパク質についての理解が深まるにつれてやはりウイルスが原因ではないだろうかという意見も強くなっているようです。ウイルス説については今回は紹介しませんが、興味のある方は講談社ブルーバックスで福岡伸一さん著の「プリオン説はほんとうか?」を読んでみてください。

 潜伏期間が10年以上と長く、発症すれば助かる方法はなく、予防する方法さえないプリオン病ですが、現象としては異常型プリオンタンパク質が大きく関わっているのは間違いないものの、メカニズムの解明には至っておらず、それゆえ予防薬や治療薬の開発も難しい状況にあります。また、食肉に含まれるプリオンを食べることによって伝染することがわかっているにもかかわらず、感染動物や処理された肉の管理が十分でないため、ヨーロッパで誕生し、アジアを経由してアメリカまで世界中に広がってしまっていること、また科学的な根拠に従わず政治的に問題が解決されようとしている点など、解決すべき問題は山積みとなっています。

「最新科学おもしろ雑学帖」の関連ページ
  124番 ウイルスは生物か
  153番 悪玉プリオンの正体は

[エンディング・他局の科学番組放送予定]

サイエンスゼロ (NHK教育 毎週土曜日 19:00〜)
 5/27 お休み
 6/3 あなたを動かす時計遺伝子
 6/10 ゼロからまなべスペシャル 最新技術で環境を守れ

地球ドラマチィック (NHK教育 毎週水曜日 19:00〜)
 5/31 『コロンブスの航海〜サンタ・マリア号を捜せ〜』

素敵な宇宙船地球号 (テレビ朝日系 毎週日曜日 23:00〜)
 5/28 台所から地球が見える〜ラッコが暮らす神秘の森〜

サイエンスチャンネル (SkyPerfecTV 765ch)
 Science Weekly News 制作年度:2002年
 今回のテーマはプリオン病について。人間で言うヤコブ病や狂牛病などで有名なBSEなどの感染型プリオンタンパク質の治療法を研究している国立精神・神経センター神経研究所の金子清俊先生のお話。

□パソコンテレビGyaO カテゴリ:ドキュメンタリー
・・・科学番組ではないですが・・・・
 「少女には向かない職業
 13歳の少女の無邪気な殺意が、やがて最強の凶器となる…。かつてないほど純真な殺人者の、痛々しいほどせつない、衝撃サスペンス!!


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