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ライブ & MP3orREALオンデマンド & ポッドキャスト 世界初の日本語科学情報 PODCAST 番組 科学コミュニケーター 中西貴之(メール) アシスタント BJ
このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■iTunesミュージックストア Podcast部門で全 Podcast番組中第2位の聴取数となりました (2006年7月3日) [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-116 銀河系の直径は約10万光年。アンドロメダ銀河は約13万光年の直径を持ち、質量は銀河系の1.5倍あると予測されています。かつては、銀河系とアンドロメダ銀河は兄弟のようにそっくりな銀河だと考えられていましたが、最新の観測では天の川銀河は中心部に棒状の構造を持つ棒渦巻き銀河であることがほぼ確実となり、また、アンドロメダ銀河の中心角はブラックホールの連星系になっていることなどがわかり、両者はかなり違った性格を持つ銀河であると考えられるようになりました。 また、銀河系は大小マゼラン雲、アンドロメダ銀河はM32、NGC205と名付けられた衛星銀河を伴っていますが、その他小型の銀河が40個程度この両巨大銀河の周辺に集まっており、半径300万光年程度の局所銀河群と呼ばれる銀河の集団を形成しています。 また、銀河系からマゼラン雲を含みアンドロメダ銀河まで包み込むように水素ガスの雲がかかっていることがわかり、この水素の雲は銀河の回転運動を超える速度で流れていることから高速度雲とよばれ、とくに銀河系からアンドロメダ銀河方向に続く雲をマゼラン雲流と呼びます。この銀河の分布と高速度雲の分布から銀河系とアンドロメダ銀河がかつてハロー同士を衝突させたことがあり、周辺の小銀河はこの時の破片であることが導き出されました。 状況証拠として、銀河系とアンドロメダ銀河の仲間の銀河集団を三次元座標上にプロットすると、両兄弟銀河を結ぶ円弧の上に小銀河が分布していることがわかったこと。高速で流れる水素の雲であるマゼラン雲流をコンピューター上で再現する研究の過程で、マゼラン雲流の先端の流速は毎秒100キロメートルであることがわかりました。この値から計算するとマゼラン雲流が流れる原動力は銀河系が回転する力と同一であることがわかりましたが、なぜかその方向は銀河系の回転方向からほぼ垂直方向にずれていました。これは、銀河系の回転以外の何か巨大な力が加わったことによってマゼラン雲流が生まれたことを示唆しています。また、マゼラン雲の軌道に関する研究の結果、マゼラン雲は約100億年前からお互いの周りを回る連銀河であることがわかりました。これは両者がほぼ同時にほぼ同じところで誕生したことを示唆しています。また、ハッブル宇宙望遠鏡による遠方の銀河の観測で、巨大銀河同士が近づきすぎて相互作用を起こすとその周辺に小さな銀河が生まれることが観測されました。 これらのことから、銀河系とアンドロメダ銀河を含む局所銀河団はマゼラン雲が誕生した約100億年前に両銀河の衝突によって誕生したという説を立てることができます。この説は提唱者である日本人の沢先生、藤本先生の名前を採ってSFモデルと呼ばれます。 SFモデルは次の通りです。100億年前に銀河系とアンドロメダ銀河はお互いに重力を及ぼしあいながらすぐそばをすれ違いました、この時、銀河本体は衝突を免れたものの、ハローと呼ばれる周辺領域は衝突し、ここで多数の小さな銀河が生まれました。その後両銀河は周辺に小型の銀河をまき散らしながら円を描くような軌道で遠ざかりましたが、40億年前に最も遠く離れた後、両者それぞれが円軌道をとって現在は急速に近づきつつあるということです。 ただし、高速度雲の大きさや由来については、様々な説があり、今回のSFモデルの前提となる観測結果は銀河系からアンドロメダ銀河まで包み込むような巨大な雲であると計算されていますが、その他、超新星爆発由来の雲であるという説や、銀河系からわき出ているという説など、SFモデルよりも実はもっと近いところにあるのではないかという説もあります。SFモデルについては、今後アンドロメダ銀河や周辺の銀河群の軌道が正確に定められれば、その有効性が判明するものと思われます。 植物の生物時計はどうなっている? 生物時計とは生物の身体の中にあって時間を測定する仕組みのことです。この仕組みによって生物には約24時間のサーカディアンリズムが生まれ、睡眠・覚醒、血圧・体温、ホルモン分泌などの様々な生理機能に影響を与えています。飛行機で長距離を移動した際などにすぐには現地の昼夜のリズムに体調を合わせることができず時差ぼけが生じたりします。人間以外の動物においても蚊が夕方になると蚊柱を作ったり、野生の動物が夜・昼で活動のパターンを変えているのも生物時計によってコントロールされています。このメカニズムについては、日本の理化学研究所の研究成果として、時計に関わる16個の遺伝子が選び出されており、これらの遺伝子がネットワークを形成して活性化したり、機能を低下させたりを繰り返してリズムを生み出しているものと考えられています。 動物における時計本体は脳の奧にある視交叉上核と呼ばれる小さな領域にあることがわかっています。このことは、実際には25時間であるサーカディアンリズムが日照に会わせて24時間ごとにリセットされることから、光の受容体である目と関係のある脳の部位に時計機能があるものと予測して研究を行った結果突き止められました。視交叉上核の機能を停止させてしまうと昼間も夜間も同じように行動し昼と夜の区別がなくなってしまうことによって証明されました。 植物においても、昼間には葉を開き夜には閉じるような運動が24時間周期で起きることがわかっています。24時間周期の運動を行う植物を暗闇においてもこの運動は継続することから、日照に反応しているのではなく、時間を司る部分が存在していることが予想されます。 けれど、植物には脳はありませんので動物とは違うメカニズムで生物時計が作り出されているものと思われますが、動物における視交叉上核に相当する部位は、植物ではどこなのでしょうか。 名古屋大学大学院生命農学研究科の研究チームは明け方にもっとも強く機能を発揮する遺伝子に、蛍のおしりが光ることに関係しているルシフェラーゼという酵素の遺伝子を接続した植物を作成し、植物の葉や茎、根など、どこでこの遺伝子の24時間周期の発現があるかを観察しました。その結果、植物のあらゆる領域で明け方に光る反応が見られました。また、植物の培養細胞1個のレベルでもサーカディアンリズムを刻むこともわかり、さらに、細胞レベルでも日照によるリセットがかかることもわかりました。 これらの結果から植物においては、あらゆる細胞で自立的に時計が機能していることがわかりました。 シロイヌナズナと呼ばれる植物は遺伝子の塩基配列がすでにほとんど解読されており、世代時間が短いため、植物の遺伝学的研究に良く用いられるアブラナ科の小さな雑草ですが、シロイヌナズナにおいては1990年代初頭からすでに時計関連遺伝子の研究が進んでおり、多くの関連する遺伝子が決定されています。 それらの遺伝子から作り出されたタンパク質を組み合わせて植物の生物時計を構築することはまだできていませんが、花の開花や、実がなるタイミングなども時計によって制御されていることはわかっています。また、過去に経験的交配によって作り出された優良な品種の植物の遺伝子を調べたところ、と駅遺伝子に変異が起きていたことがわかった例もあります。そのため、植物の生物時計を研究することは穀物や野菜などの品種改良の役立てることができると考えられるため、現在精力的にその解明が進められています。 [エンディング・他局の科学番組放送予定] |