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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■翔泳社”ポッドキャスティング入門”でオススメ番組として紹介されました。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-107 「あかり」は赤外線で宇宙を観測する望遠鏡衛星ですが、赤外線で宇宙を観測する目的は次の2つです。 ・この宇宙はどうやって造られたかのか 宇宙ができた仕組みについては、まず銀河がどうやって造られてきたのかということからアプローチすることになっています。私たちの宇宙は137億年前にビッグバンで始まりました。現在私たちが実際に観測している最も古い宇宙はビッグバンから10万年後の様子です。誕生から10万年後の宇宙はそこに含まれる物質にムラがほとんどありません。NASAの観測衛星WMAPのデータによると、そのムラは大体10万分の1ぐらいのわずかなものです。それから137億年の現在の宇宙は何もないように見える空間と銀河が集まった領域に極端に状態が分かれています。つまり、137億年の間に宇宙はこのように進化したということです。重力だけで宇宙が進化してきたとすると宇宙誕生10万年後の様子が現在のようになるには宇宙の年齢以上の時間が必要であることがわかっています。ですので、宇宙空間には私たちに観測できない何かがあるのではないか。その見えないダークマターやダークエナジーの作用で今の宇宙ができているのではないか、そう思われています。宇宙の遙か彼方、すなわち宇宙の誕生直後の様子はドップラー効果によって赤外線側に波長移動しますので、宇宙の最初を観測するには赤外線観測能力の優れた望遠鏡が必要なのです。
もう一つの目的である惑星系探査ですが、ちょうど10年くらい前にわたしたちの太陽系の外にも惑星系があるという間接的な証拠が見つかり始めました。しかし、最近天文学が見つけた惑星系は太陽系とは全然違っていて、たとえばホットジュピターと呼ばれるような、中心の星のごく近くを木星ほどの巨大な惑星がわずか数日でぐるっと回っているというような、想像を絶する惑星系が次々に発見されています。太陽系の様子から予測していた惑星系の形成過程と現在の天文学が明らかにしつつある世界は全く異なることがわかってきました。今の理論では惑星の元は宇宙のチリだと思われています。チリは非常に冷たいので光を発しません。ですから、チリを観測するためにも赤外線観測能力の優れた望遠鏡が有効なのです。 これらの観測のために「あかり」は冷たい物質から放出される赤外線を検出しなければなりませんので、望遠鏡が熱を持つとそれがすべてノイズになって観測のじゃまをします。そこで望遠鏡部分はクライオスタットと呼ばれる液体ヘリウムの入った魔法瓶のような冷却容器の中に入っており、さらに、電源や通信回路とは構造上はっきり分離しています。また、衛星に熱を与えず、しかも全天を観測するために太陽同期軌道と呼ばれる特別な軌道を飛行しています。偵察衛星などと同じ極軌道(実際はわずかに異なる)を飛行し、衛星周辺で最も大きな熱源である地球と太陽からの熱を望遠鏡部分が受けないように、常に地表の昼と夜の境界線の上を飛行しています。ここを飛行すれば太陽は衛星から見て常に真横にありますので、熱対策をその方向にだけ十分に行えば良く合理的な衛星の設計が可能となります。また、常に地球に背を向けた姿勢を取るようになっていますので、熱源としての地球も常に望遠鏡の反対側に位置することになります。 宇宙航空研究開発機構(JAXA) と欧州宇宙機関(ESA)は、2005年12月9日JAXAの光衛星間通信実験衛星「きらり(OICETS)」とESAの先端型データ中継技術衛星「アルテミス(ARTEMIS)」との間で、レーザー光による双方向の光衛星間通信実験に成功しました。双方向での光衛星間通信は史上初となります。ひきつづき、2006年3月22日から31日にかけて、「きらり」と情報通信研究機構地上局(東京都小金井市)との間で、レーザ光による光通信実験を実施しました。 その結果、3月31日、同衛星と光地上局との間での光通信実験に成功しました。 こうした低軌道地球周回衛星と光地上局とを結ぶ光通信実験成功は、世界で初めてのことです。静止衛星と地上との光通信は、NICTが開発し、JAXAの技術試験衛星Y型「きく6号(ETS-VI)」に搭載した光ターミナルとNICT光地上局間、ARTEMISとESA光地上局間の例があります。
「きらり」のような低高度地球周回衛星と地上局間の光通信は、受信光レベルが大気による減衰やゆらぎにより大きく変動するなか、高速で移動しながら地上局に正確にレーザを送信しつづけるという点で難易度の高いもので、光衛星間通信機器及び精密な衛星捕捉追尾に対する我が国の技術的優位性を示すことができた、とJAXAのプレスリリースに述べられています。 「最新科学おもしろ雑学帖」の関連ページ [エンディング・他局の科学番組放送予定] |