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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■翔泳社”ポッドキャスティング入門”でオススメ番組として紹介されました。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] [今週の関連書籍] |
Chapter-112 独立行政法人国立環境研究所大気圏環境研究領域大気物理研究室のプレスリリースによると、2020年頃にはオゾンホールが回復し始め、21世紀半ば頃にはオゾンホールは解消されるとのことです。 オゾン層は地表から20〜30キロメートル上空の成層圏にあって、太陽からの紫外線を吸収し地球上の生態系を保護する役目を担っています。しかし、オゾン層はフロンの他、臭化メチルなど塩素原子や臭素原子を放出する有機化合物、窒素酸化物などによって破壊されることがわかっています。オゾン層が破壊されると、地上に到達する紫外線の量が増加し、皮膚がんや白内障の増加、農作物への悪影響が生じる恐れがありあます。 国立環境研究所が採用したのは東京大学気候システム研究センターと共同で開発した成層圏化学気候モデルと呼ばれる数値モデルです。このモデルにフロンやハロンなどオゾン層破壊関連物質の将来の放出予測や二酸化炭素などの温室効果ガスの今後予想される濃度変動を考慮に入れて、将来のオゾン層の変化についてのシミュレーションを行い、今後オゾンホールは更に拡大するのか、オゾンホールはいつ頃回復すると期待されるかを予測しました。 化学気候モデルとは大気の循環や太陽光の吸収による地球環境の変動、海水が大気の循環に与える影響など、複雑に絡み合う環境要因も含めてモデル化したものです。これまでのモデルには充分に考慮されていなかったハロンなどを起源とする臭素によるオゾン分解も考慮していることが特徴の一つです。 成層圏のオゾン量の観測結果によると、オゾン層を破壊するフロンなどの濃度はすでに1990年代後半から減少し始めています。しかし、オゾンホールの観測結果は現時点では縮小してるというデータは得られておらず、横ばい状態にあります。 今回の予測結果によると、オゾンホールは現在、最も大きくなっていると思われます。引き続き、2010年頃までは大規模なオゾンホールの生成が続くものと予想されますが、2020 年ごろにはオゾンホールの縮小傾向が出始め、21世紀半ばには南極のオゾン層は1980 年レベルに回復するとの結果が得られました。 オゾンホールの拡大による被害についてはWHOの資料によるとオゾン全量の減少にちょうど対応するように紫外線量は増加しており、それに伴って皮膚ガン患者数も増えています。ここで注意しなければならないのは紫外線照射量と皮膚ガン患者数の変化は相関しないということです。紫外線の影響で生じる皮膚ガンは紫外線照射から何年後かに発症しますので、今ここで紫外線量が踏みとどまったとしても今後しばらく、皮膚ガン患者は増加を続けてしまうことになります。 [アスペルガー症候群] アスペルガー症候群はオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーの名前にちなんでつけられた診断名です。今年2006年はハンス・アスペルガーの生誕100年となります。アスペルガーは1944年に「小児期の自閉的精神病質」というタイトルで4人の子どもたちの不可解な言動に関する論文を発表しました。 アスペルガー症候群は ○認知・言語発達の遅れがないこと で定義されますが、コミュニケーションの障害があるものをアスペルガー症候群と呼ぶか、無いものをアスペルガー症候群と呼ぶかの違いで2種類の定義があります。一般にはコミュニケーションの障害も併せ持つ症例をアスペルガー症候群と定義しています。 脳障害が原因でやや不自然な言動を伴う自閉症と診断される子どもは1000人に1、2人いますが、その中で知的障害のないタイプが、高機能自閉症やアスペルガー症候群です。研究者によってはアスペルガー症候群は多くの場合「ちょっと変わった付き合いにくい人」ですまされてしまうため、医師の診断を受けることが無く、実際には約200人に1人はいるとした資料もあります。 アスペルガー症候群に見られる症状として次のような特徴的なものがあります。 同年齢の子どもと対等の相互的な遊びをすることが難しく、クラスの中で浮いてしまいます。幼児期には一人遊びが中心ですが、年下の子供に指図して一緒に遊ぶこともあります。ただし、他の子が自分の思い通りに行動しないと突然起こり始めたり、一人遊びに戻ったりすることもあります。 悪気はないのに、友人の弱点や傷つくことを平気で言ってしまうことがあります。他人の立場に立てないので、それを言われた友人がどのように感じるかという事を想像することができないためです。発言には悪意がないため、「正直すぎる子供たち」と称されることもあります。正直すぎるが故に、友人同士との秘密を守れないため、「すぐに先生に告げ口する奴だ」「秘密を守れないおしゃべりだ」と周りに思われることになったりします。 正直であり、他人の気持ちを理解することができないため、初対面の人に対してプライベートなことをずけずけと質問したり、自分の関心のある話題を一方的に話しかけたりすることもあります。 良い見方をすれば、陰日なたのない性格で、はきはき発言して元気も良く、自分の興味の対象に関しては大人も驚くような知識を持つという見方もできますが、実際には周りから嫌がらせやいじめを受けやすく、相手の言葉の裏にある真意や要求、友人同士の暗黙の了解を察することができず、冗談や励ましも字面通りに理解してしまうので友達とのコミュニケーションに支障を来します。これが繰り返されるうちに不登校になったり、情緒不安定な様子も見せるようになったりします。 アスペルガー症候群の原因については科学的に解明されていません。アスペルガー症候群の子どもは幼いころから漢字の読み書きや計算が得意だったりするために、勉強のさせすぎで子供をヘンにしてしまったと親が悩むこともありますが、親の育て方や愛情不足などが原因ではありません。残念ながらアスペルガー症候群そのものを治す薬はなく、いらいらや多動、不眠など症状に合わせた対症療法がとられます。 アスペルガー症候群は見た目にはわかりにくいため、本人のワガママであると誤解されたり、親が自分の子育てが悪かったからだと悩んだりします。けれどアスペルガー症候群の患者は教育現場や社会の受け入れ方次第で、有益な才能となりますので、そうした児童や生徒の良い面を伸ばす方策を探ることが必要です。 「最新科学おもしろ雑学帖」の関連ページ [エンディング・他局の科学番組放送予定] |