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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■「最新科学おもしろ雑学帖」が愛媛県の新居浜工業高等専門学校で読書感想文コンクールの課題図書に選ばれました
(2006年9月) [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-130 RNA干渉とは細胞の中でRNAの働きをRNAがジャマをしているメカニズムのことで、人間も含めてありとあらゆる生物の細胞の中に存在するメカニズムです。由来は10億年前、植物と動物の共通の祖先に現れたと考えられています。その後、植物も動物もこのメカニズムを有効に活用しながら進化を続けて現在に至っています。 遺伝子から必要なタンパク質が作られる際には、まず核内において設計図であるDNAの情報がRNAに反転コピーされます。情報をコピーされたRNAは核から細胞質に出ます。細胞質でリボソームと呼ばれるタンパク質合成装置のような酵素がRNAの情報を読み取り、この情報を元にタンパク質が作られます。 DNAに含まれる遺伝子からタンパク質を作り出す働きは生命を維持するために欠くことのできないものですが、場合によっては、タンパク質が作り出されては困る場合もあります。ウイルスもそれに相当します。ウイルス自身は細胞に寄生しなければ自分自身を分裂させて増やすことができないので、ウイルスは何とかして細胞をだまして自分の分身を他人の細胞に作らせようとします。 ウイルス対策としては古くから「インターフェロン応答」と呼ばれるメカニズムが知られていました。これは、ウイルスが細胞の中に侵入したことを感知すると細胞のすべての遺伝情報の取り扱いに関連する機能を止めてしまうものです。RNA干渉は目的は似ていますが、RNA干渉は問題となるRNAの作用のみをブロックし、その他の正常で細胞の維持に必要な機能は正常のまま保たれる点でより緻密な瀬魚だといえます。 RNA干渉のポイントは二重鎖RNAにありました。mRNAとよばれる細胞核の遺伝情報を細胞質のリボソームに伝える役目をになうmRNAは1本の糸のようなものです。ところが、細胞核で異常になった遺伝子の情報を受け取ったRNAや多くのウイルスのRNAは二重鎖になっています。 細胞核から細胞質に、あるいは細胞外部のウイルスから細胞質に二重鎖RNAが入ってくることによってRNA干渉は動き始めます。細胞質にはダイサーと呼ばれる二重鎖RNAに非常に親和性の高い酵素があります。ダイサーは二重鎖RNAを見つけると、ある長さで切断する作用をもっています。切断された二重鎖RNAは二重鎖がほどけて一本鎖になります。この一本になったRNAは別のタンパク質に組み込まれて、元々の有害なRNAを探す探査装置のような役目をになわされることになります。この探査装置のような鋳型として使われるRNAの断片とタンパク質が結合した物をRNA誘導サイレンシング複合体といいます。鋳型とぴったり一致するRNAが見つかると、そのRNAは有害であると判断され、ある場合はそのRNAを切断して使い物にならなくし、また、ある場合は、RNA誘導サイレンシング複合体自体が防波堤のように働いてRNAからタンパク質が作り出されることをブロックします。 [他局の科学番組放送予定] |