2009年11月14日
Chapter-264 軌道エレベーターと宇宙太陽光発電
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軌道エレベーター
地上3万6000キロメートルの静止軌道に宇宙ステーションを建設し、そこから地上に向けて垂らしたケーブルをレールのように利用して宇宙空間と地上を行き来する、軌道エレベーターという乗り物の研究が建設に向けて着実に進歩しています。軌道エレベーターは人間に負担のかからない速度でゆっくりと行き来することができ、ロケットのように機材が使い捨てではなく、エネルギー効率もよいので、ロケットに代わる宇宙空間への交通手段として欧米や日本で研究が進められています。
つい最近まで軌道エレベーターの建設は夢物語でした。その主な理由は、ロープウェーのロープに相当する宇宙空間から地上まで垂らすケーブルの材料が発見できていなかったためです。ケーブルは3万6000キロメートルもの長さになるため、これまで最も丈夫な鉄鋼のワイヤーであっても自分の重さで切れてしまいます。ところが、1991年に鉄鋼の数十倍もの強さを持ち、しかも驚異的に軽いカーボンナノチューブが発見され、軌道エレベーターの実現に必要な基礎的な技術はすべて揃ったと言われています。
宇宙で太陽光発電
化石燃料の枯渇問題や、化石燃料の使用によって放出される二酸化炭素が地球環境に与える影響の観点から太陽光発電の普及が進んでいますが、太陽の放つ光が大気で反射や拡散される前に宇宙空間で受け止め、宇宙で電気に変換して地球に送ろうという宇宙太陽光発電が実現への第一歩を踏み出し、日本の
JAXAは原子力発電所一基分の出力を持つ宇宙太陽光発電所を2030年に打ち上げることを目指しています。
現在精力的に研究が進められているのは、宇宙空間で発電した電気を地球に送電する方法です。軌道エレベーターのケーブルを送電線として利用するようなアイディアもありますが、軌道エレベーターより宇宙発電所の方が速く実用化しそうですので、現実的には電気をマイクロ波やレーザー光に変換して地上に建設した受信施設のアンテナに向けて送信することになると思われます。
宇宙太陽光発電所は地上の太陽光発電施設よりも受け取るエネルギーが10倍も大きいだけでなく、天気の影響も受けずに発電でき、太陽パネルを並べる土地を確保する必要もなく、地上から3万6000キロ離れた静止軌道に設置すれば、1日中太陽の光を受けることができます。
宇宙空間での発電実験には今後5年以内に着手する予定で、2015年頃に小型の発電衛星を打ち上げ、電力の電送実験を行う計画です。そして、2030年頃には原子力発電所1期分に相当する100万キロワットの送電実験を行いたい考えです。
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ
▼宇宙で生活する人特有の病気「宇宙頭痛」を発見
National Geographic News June 5, 2009
最新の研究によると、宇宙飛行士の多くが、地上では経験したことのない様な激しい頭痛に見舞われたことがあるようです。宇宙飛行士への匿名の聞き取り調査を行ったところ、7割以上が宇宙飛行中に頭痛に悩まされたと述べていることがわかりました。宇宙空間ではこれまでも宇宙酔いと言われる吐き気や嘔吐、目まいなどの症状が出ることがありますが、これとはどうやら違うもののようです。
頭痛が発症する仕組みはまだわかっていませんが、可能性の1つとして、通常であれば下半身にたまる体液が無重力状態では体内のほかの部位に移動してしまうことが原因である可能性が指摘されています。また、空気循環が悪いことが原因である可能性もあります。自分が吐いた二酸化炭素を再び吸い込むことによって体内の二酸化炭素が過剰になってしまうことによって頭痛が起きているのかもしれません。
▼月の地下に大空間か?
太陽は今後数億十年をかけて活動が徐々に活発になり、やがて地球は高温になりすぎて生命の存在できない惑星になると予想されています。従来の計算では、あと10億年ほどで地球の生命は死滅してしまう可能性が指摘されています。カリフォルニア工科大学の研究者らはここに新たな計算結果を説として提案しました。その節によると地球はあと23億年も生命を保持できる可能性も残されているというのです。
その仕掛けは地球の気圧にあります。気圧は、温室効果ガスの効果に大きく影響を与えます。温室効果ガスが吸収する赤外線の量を気圧が左右するためで、気圧が上がると待機は赤外線をより多く吸収し、地球の気温は上昇します。反対に、気圧が下がると気温も下がります。古い時代の岩石を分析することによって地球の気圧を遠い過去にさかのぼって推定し。底から未来の大気圧を予想することによって地球が今後どの程度生命を育むことができるか、より正確な値を得ることができそうです。
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