Chapter-133 脳の機能・太陽系外惑星
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2006年10月28日 (前回の放送|次回の放送)
脳が安定して情報処理できる謎を解明
科学技術振興機構の広報誌 第348号に「脳が安定して情報処理できる謎を解明」という記事が掲載されています。
研究チームは視覚刺激に対して正しく応答している脳のある部位(前頭連合野)に特殊な電極を挿入し、神経細胞が活動している際に電極周辺の細胞の活動をまとめて記録し、その後に一つ一つの細胞がどのように活動しているかを分析する技術を開発しました。サルの脳にこの電極を挿入し、視覚刺激に対する神経細胞の応答を調べたところ、0.1mmの範囲内にある近接した細胞同士の約80%が、0.001〜0.005秒の精度で同時に反応していることを見つけました。さらに、同時に反応している細胞の多くは、共通の刺激に対して共通の反応をしているようです。というのも、同時に反応する細胞の45%は、視覚刺激の種類が変わると同時反応を示さなくなることもわかりました。
脳が小さな損傷では働きが損なわれず、大きな損傷でもリハビリで機能が回復するのは、損傷によって失われた細胞の機能を複雑な神経細胞の組み替えなどを一切行う必要なく隣接した細胞で代替できるからであろうと思われます。
太陽系外惑星系の惑星の昼と夜の状態の変化
NASAの赤外線天文衛星スピッツァーが太陽系外惑星系の惑星の昼と夜の状態の変化を観測することに世界で初めて成功しました。この研究結果によると恒星のすぐ近くを公転する系外惑星の恒星に向いた昼の面と逆方向の夜の面で1400度もの温度差があることがわかりました。
スピッツァーは地球から40光年離れたアンドロメダ座の太陽系外惑星系を観測しました。この惑星の公転周期はわずか46日で、地球の月と同様に、潮汐力によって恒星に対して常に同じ面を向けていると考えられていますので、この惑星では昼の領域は永遠に昼が続き、夜の領域は永遠に夜の続く惑星です。したがって、恒星を向いた昼の面と反対側の夜の面との間には大きな温度差が生じている可能性が考えられていました。
NASAの研究チームはこの惑星の昼と夜の温度差を測定することを目標として、5日間の観測を行い、惑星の公転に伴って惑星系全体から放出される赤外線の強さが変化していることがわかりました。恒星と惑星を別々の天体として観測できるほどの解像度はありませんが、地球からは惑星の公転面を斜め上から見ていることがわかっており、惑星がその公転軌道上のどこにいても恒星と重なり合わないことがすでにわかっています。
このような状態で惑星系からの赤外線量が変化するということは惑星には赤外線を強く放射する面とあまり赤外線を放射しない面があるということができ、その差を温度に換算すると、1400度程度になると見積もられました。
これまで、ホットジュピターでは潮汐力によって恒星にいつも同じ面を向けているためその昼側の表面温度は非常に高温であろうと思われていましたが、その温度は測定されていませんでした。この惑星では昼間の高温側から、夜の面に向かって表面温度と同じ程度の温度の熱風が吹いていると考えられ、ジュピターといえば、横縞の模様を思い浮かべる方が多いと思いますが、ホットジュピターでは恒星に近い点から放射状に表面ガスが流れてスイカのような模様になっているものと思われます。
[最新科学おもしろ雑学帖の関連項目]
084番 脳を構成する細胞たち
087番 脳の神経細胞は減り続けるわけではない
088番 人工小脳ができた
046番 太陽系外惑星系の探し方
047番 太陽系外惑星系で地球型惑星を発見
[他局の科学番組放送予定]
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