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Chapter-40 1991年に日本人によって発見されたカーボンナノチューブは炭素原子で作った微細なホースのような化合物で、同じ炭素原子からなる石炭やダイヤモンドのような従来知られている炭素の構造が持つ性質とは全く異なる新たな性質を持っているため科学や産業への応用が期待されています。 カーボンナノチューブの性質はチューブの直径によって導体になったり半導体になったりするほか、電解をかけるとチューブ先端から電子が放射されますので平面ディスプレイへの応用が考えられますし、チューブの中に水素を蓄えることができるので燃料電池への応用も考えられます。 今回、独立行政法人物質・材料研究機構の研究者らはこのカーボンナノチューブを使った世界で最小の温度計を開発しました。「カーボンナノ温度計」と名付けられたこの温度計はカーボンナノチューブの中に液体状の金属ガリウムを注入し、液体ガリウムが温度変化に対応して膨張収縮する様子を電子顕微鏡で観察することによって温度を測定します。私たちが日常使用する水銀温度計の外側のガラスの代わりにカーボンナノチューブを、水銀の代わりに液体ガリウムを使ったとイメージするとわかりやすいはずです。 カーボンナノ温度計の直径は数ナノメートル(1ミリメートルの1000分の1のさらに1000分の1)しかありませんので、微小な空間の温度を測定することができ、現在のところ50度から500度まで液体ガリウムの膨張収縮と温度の間に直線性が得られています。ガリウム自体は2403度まで(水銀は300度)液体の状態で存在しますが、カーボンナノチューブが600度程度までしか耐えられませんので今後の改良次第では水銀で測定できるよりも遙か高温を測定することができそうです。 けれども、カーボンナノ温度計には以下のような問題点があります ・電子顕微鏡で温度をチェックしなければならいのでもっと簡便な観察方法が必要 ナノテクノロジーの進展のための非常に有用なツールになる可能性を持つカーボンナノ温度計の実用化に向けさらに研究が行われることになっています。 参考文献
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