インターネット科学情報番組



科学コミュニケーター 中西貴之
アシスタント BJ

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 このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。
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本も書いてます



 

毛細血管のパターン形成に成功>> プレスリリース  
 大日本印刷と東京医科歯科大学の研究者らが光触媒を利用した独自の親疎水パターン形成技術(特殊な印刷技術)を応用して血管内皮細胞を培養し、従来困難とされていた血管のパターン形成に成功しました。
 この技術は事故などで失われた臓器を人工臓器で置き換える際に必要な血管網をあらかじめ体外で設計したパターン通りに形成させることができるようになったことを意味しており、再生医療の進展に大きく寄与するものと思われます。

>>「Mowton(放送終了)」はこちら 

Chapter-40 [聴くMP3をDL
 カーボンナノチューブで作った世界最小の温度計

Chapter-39 [聴くMP3をDL
 水素エネルギーの限界と二酸化炭素地中貯留プロジェクト

Chapter-38 [聴くMP3をDL
 量子コンピュータ実現への道筋が見えてきた

Chapter-37 [聴くMP3をDL
 多くの脊椎動物に共通する謎の遺伝子

Chapter-36 [聴くMP3をDL
 今週の人工衛星「はやぶさ」

Chapter-35
 揺れない地震は要注意 [聴くMP3をDL

Chapter-34
 卵子だけでマウスが誕生した [聴くMP3をDL

Chapter-33
 食感に脳はどう反応するのか [聴くMP3をDL

Chapter-32
 ニート彗星、リニア彗星、ブラッドフィールド彗星 [聴くMP3をDL

Chapter-31
 シリーズ学会発表(1) [聴くMP3をDL

Chapter-30
 吉田光由とその著作『塵劫記』 [聴くMP3をDL

Chapter-29
 花粉症は克服できるのか [聴くMP3をDL

Chapter-28
 質量はどこから来るのか [聴くMP3をDL

Chapter-27
 バイオハザードは身近なところにある [聴くMP3をDL

Chapter-26
 御木本幸吉 [聴くMP3をDL

Chapter-25
 サイエンスニュースフラッシュ [聴くMP3をDL

Chapter-24
 多重人格に関する最新の研究成果 [聴くMP3をDL

Chapter-23
 放射線を用いた植物の品種改良 [聴くMP3をDL

Chapter-22
 火星探査車「スピリット」のテクノロジー [聴くMP3をDL

Chapter-21
 酒酔いのメカニズム [聴くMP3をDL

Chapter-20

 サラマンダーはパートナーの浮気を許さない [聴くMP3をDL

Chapter-19
 結核治療薬が高所恐怖症治療に有効 [聴くMP3をDL

Chapter-18
 新聞ニュース斜め読み [聴くMP3をDL

Chapter-17
 数を数える仕組みは男女で異なる [聴くMP3をDL

Chapter-16
 ニッポニアニッポン・トキ [聴くMP3をDL

Chapter-15
 数を数える仕組みは男女で異なる [聴くMP3をDL

Chapter-13
 あくびは親切な人にうつる [聴くMP3をDL

Chapter-12
 試験のストレスでニキビは悪化する [聴くMP3をDL

Chapter-11
 朝型人間・夜型人間は遺伝子で決まる [聴くMP3をDL] 

Chapter-10
 ウィルヘルム・レントゲンがX線を発見 [聴くMP3をDL] 

Chapter-9
 Kids:夏休みの自由研究はブラインシュリンプはいかが? [聴くMP3をDL] 

Chapter-8
 クローン人間は作れない [聴くMP3をDL] 

Chapter-7 男性の脇の下のにおいで女性はリラックスする? [聴くMP3をDL]  

Chapter-6
 早川徳次・日本の地下鉄の祖 [聴くMP3をDL] 

Chapter-5
 Kids:夏服は何故白い? [聴くMP3をDL] 

Chapter-4
 早期老化遺伝子が見つかった [聴くMP3をDL] 

Chapter-3
 サイエンスニュースフラッシュ [聴くMP3をDL] 

Chapter-2
 高柳健次郎・全電子式テレビの開発 [聴くMP3をDL] 

Chapter-1
宇宙の起源へ挑む [聴くMP3をDL] 

Chapter-40
2004年7月10日

カーボンナノチューブで作った世界最小の温度計

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 1991年に日本人によって発見されたカーボンナノチューブは炭素原子で作った微細なホースのような化合物で、同じ炭素原子からなる石炭やダイヤモンドのような従来知られている炭素の構造が持つ性質とは全く異なる新たな性質を持っているため科学や産業への応用が期待されています。

 カーボンナノチューブの性質はチューブの直径によって導体になったり半導体になったりするほか、電解をかけるとチューブ先端から電子が放射されますので平面ディスプレイへの応用が考えられますし、チューブの中に水素を蓄えることができるので燃料電池への応用も考えられます。

 今回、独立行政法人物質・材料研究機構の研究者らはこのカーボンナノチューブを使った世界で最小の温度計を開発しました。「カーボンナノ温度計」と名付けられたこの温度計はカーボンナノチューブの中に液体状の金属ガリウムを注入し、液体ガリウムが温度変化に対応して膨張収縮する様子を電子顕微鏡で観察することによって温度を測定します。私たちが日常使用する水銀温度計の外側のガラスの代わりにカーボンナノチューブを、水銀の代わりに液体ガリウムを使ったとイメージするとわかりやすいはずです。

 カーボンナノ温度計の直径は数ナノメートル(1ミリメートルの1000分の1のさらに1000分の1)しかありませんので、微小な空間の温度を測定することができ、現在のところ50度から500度まで液体ガリウムの膨張収縮と温度の間に直線性が得られています。ガリウム自体は2403度まで(水銀は300度)液体の状態で存在しますが、カーボンナノチューブが600度程度までしか耐えられませんので今後の改良次第では水銀で測定できるよりも遙か高温を測定することができそうです。

 けれども、カーボンナノ温度計には以下のような問題点があります

・電子顕微鏡で温度をチェックしなければならいのでもっと簡便な観察方法が必要
・カーボンナノ温度計があまりに小さいため、測定したい場所へ設置・固定することが難しい
・水銀温度計では可能な最高温度・最低温度の記録が目処は立っているものの難しい
・カーボンナノ温度計を量産する方法がない

 ナノテクノロジーの進展のための非常に有用なツールになる可能性を持つカーボンナノ温度計の実用化に向けさらに研究が行われることになっています。

参考文献
化学 Vol.59 No.6 (2004)