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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■「最新科学おもしろ雑学帖」が愛媛県の新居浜工業高等専門学校で読書感想文コンクールの課題図書に選ばれました
(2006年9月) [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-141 生命体の細胞内部の構造を保つ新たな仕組みを発見 人間の場合は細胞膜と呼ばれるリン脂質の袋の中に核、ゴルジ体、ミトコンドリア、細胞質、などの機能を分担したパーツが入っています。これらの細胞を構成するパーツのことを細胞内小器官といいます。細胞内小器官は、ある定められた形態を細胞の中で保っていて、この構造を保てなければ正常な機能を発揮できないことがわかっています。 細胞内小器官の例として、細胞でタンパク質を作り出す細胞内小器官は小胞体と呼ばれ網のような形をしています。また、小胞体で作られたタンパク質を必要としている細胞内の部位に運搬する役目をしているのがゴルジ体と呼ばれる細胞内小器官です。ゴルジ体は平たいディスク状の膜が何層にも積み重なった形をしています。細胞内小器官同士の形はそれぞれの機能に応じて様々に異なっています。けれど、ある特定の機能を持つ細胞内小器官に着目すると、その形は下等な生物でも、高等な生物でも形は似ていることが知られています。従って、定められた機能を発揮するためにはその形も重要な要素であることが推測されます。 最近、細胞内小器官の形の異常と癌や虚血性疾患をはじめとする多くの病気の間に関係がありそうだというデータが報告され始めました。これは生命の維持にこの細胞内小器官の形が正しく作られることが重要であることを予測しています。しかし、病気の細胞で何が原因で細胞内小器官の形態の異常になるのか、さらには、どのようにして細胞内小器官が形成され維持されているかについてもあまりよく分かっていませんでした。 JST(科学技術振興機構)と三菱化学生命科学研究所の共同研究チームは、細胞内小器官の維持に働く細胞内膜の融合のための重要因子を探索し、その結果、p37と名付けられたタンパク質を発見しました。このp37が働かないように細工した細胞は細胞内小器官の網のような形や平たいディスク状の膜を積み重ねたような形が消えてしまいました。また、p37はp97ATPaseと名付けられたタンパク質と結合することによって機能を発揮することも発見され、この2つのタンパク質によって細胞内小器官は形作られ、機能していることが解明されました。
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