2009年12月26日
Chapter 270 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 後編
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iPS細胞研究の進展
iPS細胞の応用で実用化されつつあるのは創薬研究、つまり薬を作る研究への応用です。薬を研究する過程では研究途中の薬を試験管の中で人間の細胞と反応させてどのくらいの効果があるか、安全性はどの程度か、といった点について評価します。けれど、研究用に使用可能な人間の細胞の種類は限られています。そのため、iPS細胞によって、いろいろな人の臓器細胞のラインナップをそろえて研究に使用できれば非常に有効なツールになります。
一方で、再生医療への応用については、最も重要なiPS細胞の安全性に関する研究はほとんどデータは得られていません。そのため、今後は、人間の体に安全に移植することのできる細胞をどのようにして作るかの研究が重要になってきます。というのも、何のコントロールもしていないiPS細胞を体内に移植すると、好き勝手に増殖して、様々な臓器細胞が混じり合った腫瘍組織になってしまうからです。
あまり知られていないことですが、これまで人間のiPS細胞はマウスの細胞の上に載せて育てられていました。フィーダー細胞というのですが、iPS細胞の敷き布団のようなものです。これに関して、患者さんの細胞をフィーダー細胞として使用してその上で患者さんのiPS細胞を育てることに今年京都大学が成功しました。これはiPS細胞の作成に関わる安全性の進展に大きく寄与する技術です。
超伝導研究の再加速
リチウムイオン電池の小型化・高出力化
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ
▼山口大学などの研究チームがメダカに脂肪分の多い餌を与えることで、ヒトの病気と同じような脂肪肝や脂肪性肝炎を発症させることに成功しました。さらにこの肝臓の異変はすでに知られている治療薬で治療することができることから、発症および治癒のメカニズムが人間に似ていると考えられ、ヒトの病気を再現したモデル動物として、脂肪肝が肝炎、さらに肝硬変へ進行する仕組みの解明や創薬に活用できそうです。
▼4本脚で歩く大型の恐竜は曲がるときに後ろ脚が前脚より内側を通る「内輪差」ができることを、林原自然科学博物館(岡山市)の石垣忍・副館長らが突き止めました。このことは前輪でかじ取りをする車のように、主に恐竜も前脚でかじ取りをしていたことを示しています。
体長約30メートルの竜脚類「アパトサウルス」の仲間が大きく左へ方向を変えたときの足跡化石を分析したところ、後ろ足の跡は直進時より内側に46センチほどずれていることがわかりました。ゾウも大型動物ですが、ゾウは曲がるとき、逆に後ろ脚が外側に出ます。これはフォークリフトのような舵の取り方です。ゾウは頭が重いため重心が前にあり、体重負荷の少ない後ろ脚でかじを取り、おしりを振るようにして曲がるためだと考えられています。
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