【iPad アプリ発売開始】 【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】 植物の背丈は作物の生産性に非常に大きく関わります。作物個体の生産能力を変化させずに背丈だけを低くすることが出来ると、作物が倒れにくくなり栽培の手間が省けるとともに、植物体がかさ張らないために一定面積に密度高く栽培できます。また、茎の成長に用いられるエネルギーが実など有用部位に回るようになり、与えた肥料が効率的に用いられるため、使用する肥料の減量など環境に与える影響の軽減化にもつながります。したがって、人為的に植物の背丈を変化させる技術の開発は作物の生産性の飛躍的な向上のために極めて有望です。 このような非常に特異的な現象にだけ関わる仕組みを探す時には、細胞の表面に存在する受容体と呼ばれるタンパク質に注目するのが有効な手段です。多くの場合、1つの受容体はある特定の現象に対してスイッチとして働きます。そして、受容体を活性化させる役目を担うのはそれぞれの受容体にのみ特異的に作用する生理活性物質であるリガンドと呼ばれる物質です。そのため、目的とする現象ごとにリガンドと受容体のペアを見つけ出すことが極めて重要となります。 モデル植物として用いられるシロイヌナズナでは、ERECTAと呼ばれる受容体が植物の背丈のコントロールに関わることが古くから知られていましたが、その際にERECTA受容体を特異的に活性化させるリガンドは不明でした。もしそのようなリガンドを発見することが出来ると、植物の背丈を自在に人為的にコントロールする基盤技術の開発につながります。そこで、打田助教らはこのERECTA受容体を特異的に活性化するリガンドの探索を試み、植物が背丈をコントロールする際に用いる仕組みを解明することを目指しました。 研究者らはシロイヌナズナのゲノム情報を利用して、ERECTA受容体のリガンドとなる候補遺伝子群をいくつか選び出し、それらが実際に植物の背丈のコントロールに用いられるかどうかを検定しました。その結果、EPFL4とEPFL6と名付けられながら機能が未知だった2つのリガンド(この2つのリガンドはどちらも同じ働きを持つ)がERECTA受容体に作用することで植物の背丈がコントロールされることを見出しました。受容体であるERECTAの機能が失われた植物やリガンドであるEPFL4とEPFL6の機能が失われた植物では植物の背丈が特異的に低くなりました。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
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