【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】
2013年5月4日
Chapter-443 ホエールフォール
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ホエールフォールとは海底に沈んだ巨大なクジラの死骸のことです。大きなクジラの死骸は深海の生物たちにとっては、滅多に入手できないごちそうのかたまりで、運良くクジラの死骸に住み着けた生物たちは数十年は暮らしていくことが可能だと言われています。海底のクジラの死骸に多様な海洋生物が集まって形成された生態系は「鯨骨生物群集」とよばれます。
鯨骨生物群集はクジラの死後時間がたつにつれてその中心となる生物が変化します。最初の段階ではサメやカニなど、死肉をエサとする動物たちが集まってきて脂肪や筋肉が食べ尽くされます。次の段階は骨食海洋虫や貝類など、「栄養便乗者」と呼ばれる生物集団が死骸の内部や周囲に住み着き、骨から栄養分を吸い出すようにして生活を始めます。
栄養便乗者が吸収可能な栄養分が無くなると、細菌が骨の表面を埋め尽くし、それらの細菌をエサとする巻貝が集まるようになります。サメやカニが住み着く時代や栄養便乗者が住み着く時代は数年間しか持続しませんが、骨に細菌が発生する時代は数十年もの長い年月続きます。
本来の深海底は非常に栄養が乏しい世界ですが、ホエールフォールはそんな中で例外的な栄養の塊です。そのため、クジラの死骸の周囲や内部には、サンゴ、イソギンチャク、イカ、巻貝、ワラジムシなど、多様な生命が暮らすことになります。また、世界で初めて発見されたのが鯨の骨の中だったというオセダックス属の特殊な新種骨食海洋虫の場合は、自分の内臓に住む共生細菌の助けを借りてクジラの骨に入り込んでいきます。
オセデックスはホエールフォールでしか発見されていない非常に珍しい生物で、口も消化管もなく、共生細菌に完全に依存した生活をしています。鯨骨を外から観察すると赤くてもやもやしたものが生えているように見えますが、これはオセデックスのエラで、見えている部分よりもはるかに大きなオセデックス本体が骨の中に存在しています。この骨の中に埋まった部分をルートと呼びますが、共生細菌はルート内部に生息していて鯨骨の有機物を利用しています。
オセデックスは4種が発見されていますが、ホエールフォール以外の場所で発見された例はなく、しかも、共生細菌はあらゆる場所で発見されたオセデックスが同じ種類の菌を共生させていたりして、解明されていない謎の多い生物です。また、オセデックスに限らず、これらの生物群集がどのようにしてホエールフォールを見つけ、どのようにしてそこに移動し、どうやって世代を継代しているのかも謎になっています。
【今後のトークライブの予定】
(下関)2013年6月8日(土)10時30分 下関市生涯学習プラザドリーム・シップ【中止】
(東京)2013年7月13日(土)19時 阿佐ヶ谷ダイナー・ヴォイニッチ 阿佐ヶ谷Loft A
(下関)2013年8月10日(土)10時30分 下関市生涯学習プラザドリーム・シップ
(周南)詳細未定 2013年秋
(大分)2013年9月 高校生向け校内行事です。(参加者募集はありません)
(富山)2013年10月 高校理科の先生向け行事です。(参加者募集はありません)
(東京)2013年11月9日 サイエンスアゴラ2013(未定)
【今後の新刊の予定】
2013年7月16日(予定) ソフトバンクから新刊でます。
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