【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】
2013年4月6日
Chapter-439 珍渦虫(ちんうずむし)
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珍渦虫はヨーロッパの海底だけで発見されている分類学上も非常にマイナーな少数派生物です。ですが、珍渦虫は世界の進化生物学者の注目の的なんです。普通の動物なら付いているような目や生殖器官にような器官がなくて、非常に単純な構造の体をしちます。成熟しても体長は1〜3センチメートル。見た目はゾウリムシを楕円形にしたような形です。分類上の位置づけは長年定まっていませんでしたが、最近はヒトを含む脊索動物門に比較的近い新しい動物門に分類する動きが出ています。
最初に発見されたのは1878年で、スウェーデンの海底の泥で見つけられたのですが、分類上は不明で1949年に詳しく報告された。当時は成長の様子も全くわかっていませんでした。
筑波大学らの国際研究チームは、珍渦虫を繁殖期にあたる真冬にスウェーデンの西海岸の海底100メートルの泥から採取し観察を行いました。現地の海水を入れた水槽で飼うと、多数の卵と幼生のような9匹を発見することができました。発見した生物が珍渦虫の幼生であることは遺伝子解析で確認されました。幼生を発見したのは世界で初めてのことでした。また、遺伝子解析も行いました。
幼生は楕円形で0.2ミリメートル程度。中枢神経、口、目、感覚器官、手足、腎臓などの内臓などは無く、体の表面にある繊毛を使い、回りながら泳いでいました。また、体内には消化器官になると見られる球形の細胞がありました。筋肉細胞や神経細胞は少ないものの成体とほぼ同じ位置に見つかりました。成体には口と行き止まりになった袋のような腸があります。生殖方法は不明です。
幼生は5日ほどたつと、筋肉を使って体を伸縮させたり水槽の底をはったりするようになりましたが、エサは食べず、卵の栄養を体内に蓄えて育っていました。成体は精巣や卵巣のような生殖器官はなく、精子や卵が体中に散らばっていました。幼生には口はなく、成体には口があって口に泥をふくんで栄養分だけを取り込んで生きていると推測されました。幼生は8日ほどで死んでしまいましたので、口がどのようにしてできるのかは謎です。
こんな単純な生物に進化生物学者が興味を持つのは、珍渦虫の研究が動物全体の共通祖先の解明につながる可能性があるからです。
珍渦虫の成長過程から「人の遠い祖先も珍渦虫のように単純な幼生だった可能性があります。今のところヨーロッパの海でしか見つかっていませんので、今後は日本での発見にも挑戦するようです。
【今後のトークライブの予定】
(下関)2013年6月8日(土)10時30分 下関市生涯学習プラザドリーム・シップ
(東京)2013年7月13日(土)19時 阿佐ヶ谷ダイナー・ヴォイニッチ 阿佐ヶ谷Loft A
(下関)2013年8月10日(土)10時30分 下関市生涯学習プラザドリーム・シップ
(周南)詳細未定 2013年秋
(大分)2013年9月 学生さん向け行事です。
(東京)2013年11月 サイエンスアゴラ2013(未定)
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