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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■アストロアーツ社刊「星ナビ」2007年2月号で紹介されました(2007年1月) [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-150 黄砂が気候に与える影響 黄砂の程度は、発生域の風の強さ、植生、積雪の有無、土壌水分量、地表面の土壌粒径などや上空の風の状態によって決まり、日本や韓国における黄砂の観測日数は増加傾向にあります。しかし、年ごとの変動が大きく、長いスパンで見た場合に黄砂が増加しているのか減少しているのかもはっきりしていません。 大気中の黄砂は太陽からのエネルギーおよび、地球表面からのエネルギーの反射を散乱するのか吸収するのかにより、大気を加熱する可能性も、冷却する可能性も両方を持っています。黄砂は太陽エネルギーを吸収して大気を加熱する性質もありますが、日傘のように働いて太陽エネルギーを宇宙に反射する性質も併せ持っています。加熱と冷却のどちらになるかは、大気中の黄砂の粒径ごとの鉛直分布、黄砂粒子が光を散乱するのか吸収するのかの光学特性、あるいは地表面の反射率などによって決まります。また、工場や輸送機関から排出される「すす」などの人為起源エーロゾルと黄砂との混合を考慮した最近の研究によれば、黄砂粒子は発生域ではやや大気を冷やす作用を持ちますが、すすと混合されることにより、エネルギー吸収特性が強まり、大気を暖める作用を持つ事例が報告されています。しかし、黄砂は空中で亜硫酸ガス、フッ化水素、窒素酸化物(NOx)、硝酸、オゾン、アンモニアなどさまざまな物質を吸着する性質があり、吸着した物質の種類や量によって黄砂の物理化学的特性や黄砂が気候・熱収支に与える影響が変化してしまうので、実態把握は非常に困難です。 黄砂はまた、海洋に落下することによって海洋の生物圏へも影響を与え、そこから気候へも影響をあたえます。黄砂粒子には鉄分をはじめ必須微量元素が含まれているため、海洋表面に降下した黄砂は、海洋表層の植物プランクトンの栄養塩として働き、プランクトンの増殖をコントロールします。プランクトンは大気と海洋の炭素循環に大きく関わっていますので、黄砂が海洋への栄養塩供給を通じて気候に与える影響の評価が進められつつあります。 黄砂は地球環境への影響の他に、私たちの生活にも直接的な被害を与えます。すなわち、黄砂を吸い込む事による呼吸器官への影響や農作物への被害が指摘されている褐色雲を形成したり、屋外の洗濯物や車を汚すなど国民生活に影響したり、交通障害の原因となる場合です。最近では、黄砂が地球規模で有害物質の運搬役を担っていることもわかっています。 日本では黄砂といえば、春に西日本で発生するというのが通例でしたが、最近では秋にも発生しますし、東日本に黄砂が降ることも珍しくありません。かつては、視界が1キロメートル未満となるほどの黄砂現象は年間20日程度でしたが、最近は年間50日を超える年も現れ始めており、黄砂被害が全国レベルかつ長期間になるにつれて黄砂に対する関心が高まり、今後の研究の進展が期待されています。 ※詳細資料はまぐまぐプレミアムで配布中です。 [他局の科学番組] □ディスカバリーチャンネル |