2010年1月9日
Chapter 272 最近発見された生物

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現在生きている珍しい生物

スケーリーフットの大群衆

 スケーリーフットは世界で唯一、体の一部が鉄でできている生物です。一見単なる巻き貝ですが、裏返すと足の裏に相当する部分に硫化鉄のウロコがびっしりと形成されています。2001年に米国の研究者らによって発見され、めったにいない生物だと思われていました。ところが、2009年に行われた日本の潜水調査船しんかい6500による調査で、深海熱水噴出口にまとわりつくエビやカニの下にスケーリーフットの大群衆が発見されました。

ホエールフォールは不思議生物の宝庫

ホエールフォールはクジラの死体が海底に沈み、そこに死体をエサにする独特の生態系が発生したものです。ホエールフォールでしか見られない特殊な生物の代表がオセダックスと呼ばれる生物種ですが、今回、新たに発見されたオセダックスはメスは鯨骨に固着し栄養を摂取しますが、オスは体長が0.2ミリしかなく、メスの胴体を取り巻くゼラチン質の組織に住み着いていました。

肺がないのに陸上生活できる両生類

 肺がないのに陸上生活できる両生類の新種がガイアナで発見されました。この両生類には足もなく、ミミズのような姿のアシナシイモリと呼ばれる仲間です。アシナシイモリは1995年に発見されて以来これまで1種類しか発見されていない珍しい生物です。また、2008年には肺のないカエルも発見されていて、肺を持たずに陸上生活できる生物は思いのほか多くいそうです。

すでに絶滅してしまった生物

同時代に同じ場所で全く違う性質のワニが共存

 1億年前の白亜紀に繁栄していた新種のワニ類の化石がアフリカのサハラ砂漠で発見されました。「イノシシワニ」は全長6メートルでイノシシのように突き出た牙を持っています。「パンケーキワニ」も全長は6メートルですが、イノシシワニがどう猛で小型の恐竜を食べていたと考えられるのに対し、平らな口を水の中で開けて魚が入り込んでくるのを待っていたものと思われています。「ラットワニ」は全長1メートルで植物や昆虫を探して食べていたようです。

日本にもいた角竜

日本国内で初めてトリケラトプスの祖先と思われる角竜の化石が発見されました。角竜とは白亜紀だけに生息し、口や目の上などに角を持ち、頭骨後部が大きくフリル状に広がった恐竜です。トリケラトプスは北米大陸で繁栄した恐竜ですが、その起源は東アジアであると考えられていますので、今回の発見からトリケラトプスの仲間の進化の道筋を解明するヒントが得られそうです。

鳥の特徴を持った恐竜

恐竜が地球上に登場した三畳紀後期の恐竜化石で鳥の呼吸器官とみられる痕跡が発見されました。鳥類の遠い祖先は恐竜だったと考えられていますが、爬虫類から恐竜へと進化した直後に、既に鳥類の特徴を備え始めていた可能性があります。恐竜は肺呼吸ですが、鳥類は肺のほかに「気嚢(きのう)」と呼ばれるポンプのような器官を複数持っています。今回発見された新種恐竜の首の骨の側面に気嚢の存在を示唆する特徴的なくぼみがあることが確認されました。

ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ

▼人工視覚システムの臨床試験を大阪大学が計画しています。メガネにCCDカメラを取り付け、その映像を電気信号に変換して視神経を刺激することによって、失われた視力を回復させるのが目的です。この方法で指の本数がわかる程度の視力が得られるそうです。

▼不公平をいやがる脳の部位を発見
 玉川大学の研究者らは、fMRIを使った研究で、これまで表情や恐怖に関わることが知られていた扁桃体が、不公平をいやがるときに盛んに活動することを発見しました。扁桃体の活動をみることによってその人が不公平をどの程度嫌うかが推測できる可能性があります。


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バックナンバー
   
Chapter 271 2010年はリンの貴重さに思いをはせる年にしましょう  
Chapter 270 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 後編  
Chapter 269 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 前編  
Chapter 268 臭わない病気、聞こえない病気に関する最新情報  
Chapter 267 プランクトンが住みにくくなる北極海  
Chapter 266 宇宙でがんばっている探査機たちに思いをはせる  
Chapter-265 伝統医学
Chapter-264 軌道エレベーターと宇宙太陽光発電 
Chapter-263 最近耳にしなくなったオゾンホールの現状と地球温暖化との関係
Chapter-262 金平糖のサイエンス 
Chapter-261 30分でわかるノーベル賞2009  
Chapter-260 リチウムイオン電池
Chapter-259 iPS細胞の応用研究
Chapter-258 月での水の存在
Chapter-257 早起き遺伝子と恐がり遺伝子
Chapter-256 グラフェン
Chapter-255 地球温暖化とちょこっと発電 
Chapter-254 水素から電子を取り出す新しい触媒の発見 
Chapter-253 水にも構造がある 
Chapter-252 食べものと体内時計の関係
Chapter-251 金縛りについて
Chapter-250 国際宇宙ステーション日本実験施設きぼう  
Chapter-249 脳神経科学の話題  
特別番組 山口県立山口図書館 ちょこっとサイエンス講座「宇宙人はなぜそのヘンを歩いていないのか?」 
Chapter-248 サリドマイドの生化学 
Chapter-247 太陽系外惑星探査の歴史と現状 
Chapter-246 氷核活性細菌
Chapter-245 一卵性双生児の最新科学 
Chapter-244 ダークマターとダークエナジー
Chapter-243 フローティングタッチディスプレイ
Chapter-242 トランスジェニックコモンマーモセット
Chapter-241 食感とおいしさの関係
Chapter-240 獲得形質の遺伝に似た現象
Chapter-239 マルチバースと人間原理


>> 「Mowton(放送終了)」はこちら

Science-Podcast.jp 制作






科学コミュニケーター 中西貴之(メール
アシスタント BJ

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ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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