2010年1月23日
Chapter 274 生命科学に関する最新の話題を盛り合わせ
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爆睡中にも脳は記憶に関する処理をしている
これまでも睡眠中の脳の働きについては数多くの研究が行われてきましたが、これまでの研究では脳波が覚醒時と同様の浅い眠り、レム睡眠期の研究がほとんどでした。そのため、爆睡中のノンレム睡眠状態と記憶の関係はあまり調べられていませんでした。
深い眠りについているときに音を聞かせることによって記憶の定着がどのように変化するかを調べた今回の研究で、熟睡中にもかかわらず聴かせた音楽が記憶の定着に寄与していることが明らかとなり、爆睡中であっても外部からの刺激は認識されており、特定の情報の復習を促し、記憶の増強に関わっていることがわかりました。
テレビゲームが思考能力に与える影響
テレビゲームは若者の暴力や小児の肥満を促進するなどと非難されることが多いのですが、科学的に妥当な研究方法によってテレビゲームが特定の思考能力を向上させることが確認されました。この報告によると、アクションゲームでは認知速度、パズルゲームでは認知精度が向上するということです。
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ
▼高脂肪食で変化した腸内細菌が肥満の原因に
マウスを用いた実験から、高脂肪・高砂糖食は腸内細菌の生態系に影響を及ぼし、肥満になりやすい恒久的な変化をもたらすことがわかりました。ヒトの肥満の因子としてはこれまで遺伝要因、文化的要因、環境因子などが知られていましたが、そこに腸内細菌が加わったと言うことになります。
▼ ゲノムにウイルスの痕跡 太古に人類祖先が感染か
ウマやヒツジなどに脳炎を起こすボルナウイルス遺伝子の一部が、私たち現生人類を含む哺乳動物のゲノムに含まれて子孫に受け継がれていることがわかりました。これは太古に感染したウイルスが、自分の遺伝子を宿主のDNAにコピーした痕跡のようです。
▼アルツハイマー病と癌は互いに避け合う
癌になったことのある人はアルツハイマー病になりにくく、逆にアルツハイマー病の人は癌になるリスクが低いことが示されました。アルツハイマー病は神経細胞が死んでしまう病気で、一方、癌では特定の細胞が激しい分裂を始める病気です。このため非常に大まかにみれば、神経変性疾患に罹りやすくなる生物学的因子が、細胞の分裂を防止している可能性があっても不思議ではありません。
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