子供たちに聞かせてあげたいノーベル賞

2010年10月30日
Chapter-313 バイオ医薬品

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 遺伝子組み換えや細胞融合などのバイオテクノロジーを活用した「バイオ医薬品」の世界第1号は、米国のベンチャー企業、ジェネンテックが1982年に開発したヒトインスリンとされています。インスリンは血糖降下作用を持つ生体の代謝に関与する最も重要なホルモンです。主な作用として、肝臓でのグリコーゲン合成促進と糖新生の抑制、筋肉細胞でのブドウ糖の細胞内への輸送の亢進・グリコーゲンやタンパク質の合成促進・分解抑制・脂肪分解抑制、脂肪細胞でのブドウ糖や脂肪酸の取込み促進・脂肪の合成促進・分解抑制などが挙げられます。

 インスリン療法にはかつてはウシやブタのインスリンが治療薬に使われていました。ところが、人間以外の動物のインスリンを人間に体内に入れるとアレルギー反応が起きるという問題があります。そのため、現在用いられているインスリンはヒトインスリン遺伝子を大腸菌に組み込んで培養することによってヒト型のインスリンの大量生産を行って使用しています。

 近年は第2世代のバイオ医薬品として抗体医薬がとくに注目され、がんや自己免疫疾患などの領域を中心に患者さんへの適用が急拡大しています。また、遺伝子に着目した核酸医薬などの研究開発も世界で活発化しており、バイオ医薬品のさらなる広がりと進化が予想されています。

 ちなみに、インスリンやEPO、G-CSFなど第1世代のバイオ医薬品の基本特許はすでに切れており、ジェネリック医薬品に相当する後発のバイオ医薬品のことをバイオシミラー(バイオ後続品)と呼びます。ただし、化学構造で決まる低分子の従来型ジェネリック医薬品と違って、バイオ医薬品は同じ物を作ることが再現が難しく、バイオシミラーを狙う製薬企業ではバイオ分野の技術導入やノウハウの蓄積などに向けた取り組みが精力的に行われています。

 第2世代のバイオ医薬品とされる抗体医薬品の2008年の世界市場規模は323億ドル(3兆円)で2014年には580億ドル(5兆円)になると予測されています。ただ、日本の抗体医薬市場は現在十数億ドル(1000億円)しかなく、今後の拡大が期待されているものの国内の製薬企業は抗体医薬の開発・製品化で欧米企業に大きく水をあけられています。そのため、海外バイオベンチャーの買収などによる技術・開発品の取り込みや自社研究開発の強化、国家的プロジェクトの推進などが行われています。

 抗体医薬に続く次世代のバイオ医薬品は、遺伝子治療薬や核酸医薬品ですがまだ製品はありません。日本では大阪大学から出たバイオベンチャーのアンジェスMGが、肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子を使った治療薬を重症下肢虚血の知慮薬として2008年に国内申請し、さらに、人工遺伝子のデコイオリゴという核酸医薬品を、アトピー性皮膚炎などを対象に開発しています。

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 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
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