2010年5月22日
Chapter 291 最近の桜島について
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鹿児島県の火山、桜島の活動が最近活発で5月11日に今年に入って500回目の噴火がありました。桜島は複数の火口の集合体で、現在噴火活動中の南岳(1040m)の他に、北岳(1117m)、中岳(1060m)、あわせて3つの火山と権現山、鍋山、引ノ平などの側火山からなっています。北岳は約1万1000年前から活動を始め、約4500
年前に活動を停止。その後、約4000 年前頃に南岳が活動を開始し、現在に至っています。南岳山頂火口から2km以内は立ち入り禁止となっています。山腹や付近の海底からの噴火は頻繁に起きていて「天平」「文明」「安永」「大正」「昭和」の大噴火はすべて山腹噴火であり、多量の溶岩を流出、火砕流や泥流を起こしています。
もともと頻繁に噴火している桜島ですが、その噴火の頻度が2009年以降著しく高まっているようです。2009年には桜島の噴火の観測が始まって以来最高の年間548回の爆発的噴火が観測されました。爆発的噴火とは噴火の中でも特に激しく、爆発音などを伴う噴火のことです。また、2010年に入ると爆発的噴火の頻度はさらに高まり、すでに500回を超えています。
桜島は海底下10キロメートルに桜島のマグマだまりがあり、ここにたまったマグマが上昇して桜島の噴火となります。専門家は今の状況を、姶良カルデラの地下のマグマだまりが満杯になりつつあるのではないかと分析しています。今後桜島がどうなるかという予想について、最近の科学雑誌「ニュートン」の記事には3つの可能性が記載されています。
1. 南岳の噴火が活発化し、大量の噴煙を巻き上げながら噴火が長期化する
2. 現在活発化している昭和火口で、かつての昭和噴火と同程度の1億〜2億立方メートルの溶岩を噴出する噴火が起きる
3. 昭和噴火の10倍規模の大噴火が山腹で起きる。規模は大正噴火に相当し、桜島を大隅半島と陸続きにした噴火はこの規模でした。
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ
▼難病「ハンチントン病」、原因は酵素の不足
ハンチントン病という疾患があります。従来は,ハンチントン舞踏病と呼ばれていましたが、最近では、舞踏病症状が必ず発症するというわけでないため、ハンチントン病と呼ばれることが多くなりました。優性遺伝の遺伝性変性疾患で、30〜40歳代に発症し、四肢、顔、頸、肩などに不随意運動が続発、あるいは先行して精神症状が出現するのが特徴です。経過は慢性進行性で、10〜15年ののち全身衰弱、合併症で死に至ります。
今回、東京医科歯科大学の研究で、この疾患は傷ついたDNAを修復する酵素の不足が原因で発症することが突き止めら、不足する酵素を補えば進行を抑えられる可能性が出てきました。患者の細胞では「ハンチンチン」と呼ばれるたんぱく質を作る遺伝子が通常より長いなどの特徴があり、患者に特有のハンチンチンが、切断されたDNAを修復する酵素と結びつき、働けなくしているようです。通常は生後約100日で死んでしまうハンチントン病のマウスの脳で、この酵素を作る遺伝子の働きを強めてやると、寿命は130〜140日に延びることも確認されました。
▼世界で始めて両生類のゲノムが解読された
カエルの全遺伝情報を、奈良先端科学技術大学院大が加わる国際チームが解読しました。両生類の遺伝情報が解明されたのは今回が初めてです。この情報は魚類から陸上で生活する動物へと進化する道筋の解明に役立つものと期待されています。両生類の仲間には手足が切断されても生えてくるものや、脳がなくなっても再生されるものなど、驚異的な再生能力を持っているものが多いため、遺伝子情報から両生類の再生能力の仕組みを明らかにすることでヒトの再生医療への応用も期待されます。
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