2010年10月2日
将来の労働の姿のある一面として、単純な繰り返し作業のようなものはロボットに任せることによって急速に進む少子高齢化の日本における労働力不足を補おうとする考え方があります。人が働く職場、生活する家、使用する機械などは、いずれも人の大きさや機能に合わせて作られていますので、等身大の人間型ロボットにより人の機能を代行・支援できれば、環境側への再投資は最小限に留めることができ、社会全体のコストの低減も図ることができます。そのため、等身大の人間型ロボットは、次世代ロボットの最終形態の1つとして期待され、大学、研究機関をはじめ民間企業でも近年精力的に研究開発が行われてきました。そのようなロボットを開発する過程でテクノロジー関連の問題というのは次々に 解決されてきたのですが、製作コストは依然として大きな課題として残されていました。 これまでは二足歩行ができたとか、人間と協力して一つの作業に取り組むことができたとか、そういった技術的な話題が先行していたのですが、そろそろお値段の話にも取り組みたい、また、価格とも関わってくるのですが、制御ソフトウエアについても、できるだけ汎用化することによって利便性を高めると共に価格が下がることも期待したい、そのような考えも取り入れて開発されたのがHRP-4ということになります。 HRP-4にはその全身となるサイバネティックヒューマンHRP-4Cがあります。HRP-4Cは産総研が開発したリアルな頭部と日本人青年女性の平均体型を持つ人間型ロボットで、従来のHRP4シリーズのメカニカルで大柄なボディを著しく小型化することに成功したモデルでした。ここで開発された高密度実装技術を応用し、さらに物体操作に適するように片腕に7つの関節軸を搭載し、全身で34の関節軸、つまり34の自由度を持ちながら、身長151 cm、体重39 kgの軽量でスリムなボディーを実現しています。また、HRP-4の制御システムにはRT-Preemptパッチと呼ばれる、海外のロボットソフトウエア研究者によって開発されている、ハードリアルタイム処理を実現するために必要な修正を適用したLinuxカーネルおよび産総研などが標準化に関わったソフトウエアプラットフォームOpenRTM-aistを採用し、オープンソースのロボットシミュレーターOpenHRP3をはじめ、国内外の多数のロボットシステム用のソフトウエア資産が利用可能となっています。これにより、さまざまな環境の下で稼動する人間協調型ロボットなど、今後のロボット産業で必要な次世代ロボットシステムの研究開発を加速することが期待されています。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。) ヴォイニッチの科学書は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。 定期購読はこちらからお申し込みいただけます。 このサイトでは番組のあらすじを紹介しています。無料で閲覧できます。 ※FeBe!で定期購読をしていただいている方には毎週、ここで紹介するあらすじよりもさらに紹介した配付資料をお届けしています。今週は特別に、通常は会員限定の配付資料をどなたでも無料でダウンロードしていただけます。>>253.pdf
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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
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