2010年9月11日
Chapter 306 日本の洋上風力発電
(前回の放送|トップページ|次回の放送)
自然のエネルギーを電気に変換して人間の暮らしに役立てようという試みは世界各国で盛んになっていますが、風力発電は世界各国で普及している自然エネルギーの利用の主なものの一つです。世界風力エネルギー会議の統計では2009年末の時点で世界の風力発電量は年間1億5790万キロワットで、毎年、前年比20〜30%の伸びを示しています。風力発電能力のトップは米国、次いでドイツ、中国、スペイン、インドとなっており、日本は13位です。日本は国土が狭く、毎年台風が吹き荒れる過酷な自然環境から、欧米ほど風力発電は一般的にはなっていませんでした。ところが、最近、海の上に発電風車を建てる「洋上風力発電」が注目を集めています。
洋上風力発電には陸地での風力発電に比べていろいろとメリットがあります。風車の振動が民家に伝わらないこと、陸地より強い風を受けるため発電量が多いこと、日本には設置場所が豊富にあること、そして、発電コストも普及が進みつつある太陽光発電に比べて割安になることが予想されています。
富士重工業と日立製作所が開発した洋上風力発電装置が2010年7月に茨城県神栖市の鹿島灘に設置され、国内初の本格的な洋上風力発電所として稼働しました。これは約2キロメートルの海岸線に沿って岸から約50メートル離れた場所に高さは約100メートルの風車7基が設置されたものです。風車は塩害対策が施され、設置は、風車の柱を鉄製のパイプで延長し、そのパイプを海底に突き刺すようにしてなされています。
日本は海岸線が長いので、洋上風力発電の設置場所は多いのですが、普及が進んでいるヨーロッパと比べて遠浅の海が少ないので、海底から風車を建設する方法では、建設可能なは今のところ20メートル程度、将来的にも水深50メートルが限界とされていて設置場所に限りがあります。そこで、「浮体式」と呼ばれる発電風車を船のように海に浮かべる方法が研究されています。2009年に世界初の浮体式実証試験がノルウェーで始まり、日本でも2012年に試験が始まります。浮体式が実用化されれば風車の設置場所の制限大きく緩和され、陸上風力発電の3倍程度は設置が可能なのではないかと考えられています。
ただ、洋上に設置する場合の問題点として、漁場の生態系を変える可能性や、渡り鳥に影響を与える可能性、船舶の航行への影響なども検討しなければならない課題です。
◇ ◇ ◇
(FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
ヴォイニッチの科学書は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。
定期購読は こちらからお申し込みいただけます。
このサイトでは番組のあらすじを紹介しています。無料で閲覧できます。
※FeBe!で定期購読をしていただいている方には毎週、ここで紹介するあらすじよりもさらに紹介した配付資料をお届けしています。今週は特別に、通常は会員限定の配付資料をどなたでも無料でダウンロードしていただけます。>>253.pdf
|