2010年8月28日 独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センターの研究者らは、大人にとってマザリーズはどのような機能を持っているのかに注目しました。この「マザリーズ」を大人が発しているとき、その人の脳の中で行われている言語に関する情報の処理が、人によって違う、具体的にはその人の育児経験の有無や男性か女性か、さらには性格の違いによって変化し、単なる幼い子供を前にした気持ちの高揚ではなく、言葉を伝えようとするより能動的で明確な意図の表れであることを突き止めました。 マザリーズは日本人の母親に特有のものではなく、ほぼすべての言語圏や文化圏で耳にすることができ、老若男女を問わずマザリーズを使うことが知られています。このことから、マザリーズはヒト共通のメカニズムがあると考えられています。一方で乳幼児もマザリーズを好んで聞くことから、言葉の獲得や情動の発達への影響に注目した研究が続けられています。 前言語期乳児は言葉を話せないにもかかわらず、母親の言語野が活発な脳活動を示したことから、母親が乳児に何とか言葉を伝えようしていることが分かりました。また、マザリーズを聞いているだけで発話にかかわる脳部位が母親は実際にマザリーズを話していないにもかかわらず、あたかも話しているかのように脳が活動することもわかりました。この言語野や運動野の活動は一過的で、二語文期幼児や小学生児童の母親では見られなくなり、成人向けの話し方と差が無くなることが分かりました。つまり、母親の脳活動は、子どもの成長と共に変化していくことが分かりました。 面白いことに、同じ時期の乳児をもつ父親では脳活動が見られませんでした。今回参加した母親らは全員専業主婦で、父親とは育児に携わる時間に差があるため、母親と父親の脳活動の違いは、それぞれの育児時間の長さの違いを反映している可能性が考えられました。また、親の経験のない男女でも脳活動は見られませんでした。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。) ヴォイニッチの科学書は株式会社オトバンクが発行するオーディオブック番組です。 定期購読はこちらからお申し込みいただけます。 このサイトでは番組のあらすじを紹介しています。無料で閲覧できます。 ※FeBe!で定期購読をしていただいている方には毎週、ここで紹介するあらすじよりもさらに紹介した配付資料をお届けしています。今週は特別に、通常は会員限定の配付資料をどなたでも無料でダウンロードしていただけます。>>253.pdf
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