2010年7月24日
Chapter 299 死につつある死海
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塩分濃度がとても高くて、誰でも簡単に浮かんでしまう湖といえば、リゾートとしても知られる死海です。死海はアラビア半島北西部にあり、西側はイスラエル、東側はヨルダンと接しています。死海に水を供給している川はヨルダン川が唯一で、死海からは流れ出る川はありませんが、年間降水量は50mmから100mmと極端に少なく、気温は夏が32度から39度、冬でも20度から23度と非常に高いため、湖の水の蒸発が水分供給を上回る状態にあって、その結果、約30%という高い塩分濃度が生まれました。塩分の高い環境は生物の生息には不向きです。そのため、死海には高好塩菌や緑藻類などわずかな生物にみが生息しています。
この死海で今、急速な湖面の低下が進行しており問題となっています。湖面の低下が観測され始めたのは20世紀中頃のことでした。その原因は灌漑農業がヨルダン川の水を大量にくみ上げてしっまったためであろうと推定されています。
そこで、死海をよみがえらせるために、紅海から全長180キロメートルの水路を建設して水を引き、
死海の水面を上昇させようとするプロジェクトが提案されています。死海の標高が非常に低く、水源の紅海の方が高い位置にあるのでその落差を利用して水力発電を行い、そのエネルギーで淡水化プラントを稼働させ、周辺地域に毎年8億5000万立方メートルの飲料水を供給するプランになっています。
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ
▼腸内細菌が関節リウマチを誘発
腸内細菌が、関節リウマチの原因となりうる免疫反応を誘発する可能性が、マウスを用いた実験で示されました。ハーバード大学研究者らは遺伝的に関節炎を発現しやすいマウスを無菌状態で飼育した場合は関節炎を起こしにくく、このマウスの胃に一般的な腸内細菌を注入したところ、4日以内に関節炎が発現したということです。
▼シロアリの女王フェロモン 正体突き止める 駆除剤に道 岡山大チーム
シロアリの巣では女王が卵を産んで子孫を増やし、働きアリはエサ運びや幼虫の世話などに徹しますが、これは女王が出すフェロモンが、働きアリが卵を産めるようになるのを妨げるためであると考えられています。今回の研究で長年謎だったフェロモンの正体は果物にも含まれ菓子の香料に使われる「ブチルブチレート」と「2―メチルブタノール」であることがわかりました。
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