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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-159 深海底熱水活動域微生物 1970年代になると研究手法も洗練され、地下50メートル程度の井戸からくみ上げられた水の中に生息する微生物の研究が行われるようになり、地下水中には様々な微生物が生息していることがはっきりしてきました。けれど、当時の微生物の研究手法は地下からとりだした微生物を人間が考え出した栄養分の中で生育させ、増殖した微生物を調べるという研究手法でしたので、本当に地下深くの地下水中という特殊な環境でしか生きることができない微生物はすべて死滅してしまって、調べることができなかったのではないかと考えられます。 1990年代になると遺伝子を使って微生物を飼育せずに研究する手法が普及しました。つまり、地底の微生物をとりだして死んでしまっても、その遺伝子は残骸として残りますので、地下からくみ上げた水の中に含まれる遺伝子を片っ端から調べることによって、その中にどのような微生物が生息していたのかを推定するという方法です。このような方法により、これまで生物など存在しないだろうと思われていた地中深くに広大な微生物生息圏があることがほぼ確実となりました。 一方、1977年に数百度の熱湯を海底の小さな穴から吹き上げている熱水噴出口と呼ばれる海底の地形がそこに生息する奇妙な生物群集と共に発見されました。ここに住む微生物は太陽の光を必要とせず、300度を超える熱湯の中でも生き残り、110度を超える水温で活発に増殖するそれまでに誰も見たことのないような性質の微生物でした。 また、熱水噴出口周辺の土壌が熱水噴出口から吹き出したように見える核酸や脂肪酸などで汚れていたことや、海底熱水噴出口周辺で海底火山の噴火が起きるとその周辺に膨大な量の熱さに強い微生物がまき散らされることなどが発見され、熱水噴出口周辺に生息しているのが発見された微生物はその下に広がる微生物圏から噴き出す熱水に乗って海底に運び出されたのではないかと考えられるようになりました。 さらに、2001年にはインド洋で初めての深海底熱水活動域が発見されました。ここに生息している微生物がどのようなものかを調べたところ、非常に高い温度を好みメタンを作る能力のある細菌が熱水と共に噴出しているらしいことがわかりました。熱水噴出口付近の地下にはメタンを利用して生育する生物群の生態系が存在していることが明らかとなり、英語表記の頭文字をとって、ハイパースライムと名付けられました。 ※詳細資料はまぐまぐプレミアムで配布中です。 [他局の科学番組] □ディスカバリーチャンネル |