子供たちに聞かせてあげたいノーベル賞

2010年11月13日
Chapter-315 グリーゼの惑星

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 星座の「てんびん」は星座にまつわるギリシア神話において、女神アストライアが人間の魂を載せて善悪を量ったものと言われています。アストライア神々の王ゼウスとテミス女神のあいだの娘です。オウィディウスの『変身物語』によると、地上がサトゥルヌスによって統治されていた時代の気候は常に温暖で自然は豊かな恵みをもたらしていました。 人類はこの恩恵を受け文明を持つ必要さえなく平和に暮らしていました。 この時代を黄金時代といいます。

しかし、ユピテルがサトゥルヌスから政権を奪うと、時代は白銀時代となり、世界に四季がもたらされました。人々は食料を得るあめに農作業を行ったり、寒さや暑さから逃れるために住居に住むようになったりしました。続く銅時代には、人類はついに武器を手にして争うようになってしまいました。そして最後に鉄時代が訪れ、地上にはあらゆる悪行が蔓延しました。鉄や金などの地下資源を手にするようになった人類は、文明や経済を発達させ、所有欲に駆られて土地の私有や海外遠征を始めたのです。

アストライアは、神々の中で最後まで地上に留まって人々に正義を訴え続けましたが、この時代に至り、遂に、欲望のままに行われた殺戮によって血に染まった地上を去ったのです。そして彼女は天に輝く星となり、現在その姿はおとめ座とも呼ばれています。また、善悪をはかるために所持していた天秤がてんびん座になったとされています。

このてんびん座の中に、宇宙人がいるかもしれない惑星が見つかったことが最近話題となっています。その惑星を持つ恒星は地球から20光年離れた「グリーゼ581」です。すでに4つの惑星が見つかっていましたが、アメリカ・カリフォルニア大学などの研究チームが新たに2つを発見し、そのうちのひとつが中心の星からの距離が生命が誕生するにちょうど良いハビタブルゾーンと呼ばれる一にあるらしいことがわかったのです。グリーゼ581の惑星は発見順にb、c…と命名され、軌道の順は最も内側のeから、e, b, c, g, d, fの順に並んでいます。この中で最新のgが「ハビタブル」生命が存在しうる惑星とされています。

グリーゼ581の惑星の中で最も恒星に近い軌道を回っている第1惑星グリーゼ581eは、質量が地球の1.9倍程度と、これまで発見された太陽系外惑星で最も小さく、また地球の大きさに最も近いと推定されています。ただし、恒星からの距離は太陽と地球の距離の100分の3しか無く、熱すぎる上に、強烈な紫外線を浴び、重力も小さいことから大気は存在できず、生命は誕生しそうにありません。

2番目にグリーゼ581に近い軌道を回っている581bはホットジュピターと総称される灼熱惑星に分類されています。グリーゼ581bの質量は地球質量の16倍から30倍の間と考えられています。恒星グリーゼ581から約600万km、地球と太陽の距離の100分の4という近い軌道を公転し、軌道周期はわずか5.4日です。

第3惑星、グリーゼ581cはハビタブルゾーンよりわずかに外れて主星に近いところを公転しています。ただし、この惑星の表面が75%以上の水の雲に覆われているならば、表面には液体の水が存在できるとする論文が発表されています。今後、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計などによってその詳細が解明される可能性は残されています。グリーゼ581cが地球と同じような組成で出来ていると仮定した場合、直径は地球の約1.5倍、質量は地球の5倍以上、表面の重力は地球の2.2倍と推定されます。

第4惑星グリーゼ581gは地球とよく似た星であると推測されています。この惑星は地球の3〜4倍の質量を持ち、37日間で公転していると考えられています。軌道が非常に中心星に近いために中心星の引力を振り切って自転することができず、地球における月と同じように、グリーゼ581gはいつも同じ面を中心星に向けて公転していますので、グリーゼ581gでは1年が1日に相当し、明るい面と暗い面の境目付近は常に地球と同じような温度であると想像されています。おそらくはっきりとした地表を持つ、岩でできた惑星であり、十分な重力を持つために大気を保持していると考えられます。グリーゼ581gはハビタブルゾーンの中央付近に位置していますので、液体状態の水が存在する可能性が高く、これまでに発見された、生物が存在しているかもしれないとされる太陽系外惑星の中で、最も有力な候補と言われています。

第5惑星グリーゼ581dは軌道がハビタブルゾーンの外側ぎりぎり付近にあります。質量は地球の約8倍の地球型岩石惑星で、公転周期は67日です。581dの軌道の計算結果からはグリーゼ581のハビタブルゾーンにはもう一つ、惑星が公転している可能性が示唆されていますが、今のところ発見されていません。

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科学コミュニケーター 中西貴之(メール
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 1965年生まれ
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