2010年2月6日
Chapter 276 1年中咲き続けるサクラの開発に成功
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独立行政法人理化学研究所が原子から電子を取り除いてできたイオン(重イオン)を光速の半分にまで加速したビームをサクラに照射することによって、春以外の季節でも開花できるサクラを作り出すことに成功したと発表しました。サクラが開花するためには開花の前に寒い時期が一定の長さ必要です。そのため、普通のサクラの開花は春に限られています。今回の研究では、サクラの開花時期を司っている遺伝子に突然変異をわざと起こして、咲く前に寒くなる必要のないサクラを作りだしたということです。
今回開発された突然変異サクラは、開花にあたって低温状態を必要とせずいつでも開花が誘導でき、野外で栽培すると、春と秋の2回、花を咲かせることができました。多数のこの桜を温室で栽培すると、次第に開花時期がずれてきて、常に桜が咲き続ける四季咲きサクラになり、新品種の「仁科乙女」と命名されました。
仁科乙女は、いつでも花を咲かせることが可能ですが、約1カ月の開花期の後、葉が茂る栄養生長期を経なければ花の芽が形成されませんので、葉が茂る期間が必要で一度咲いて、再び開花するには5カ月を要します。
ちょきりこきりヴォイニッチ
▼カンピロバクター食中毒が増加中
日本では細菌が原因となる食中毒は年々減少していますが、カンピロバクターが原因となる食中毒は増加し、2003年以降は細菌性食中毒のなかで最も多い原因物質となっています。このたび、国内で流通している鶏肉の8〜10割がカンピロバクターに汚染されていることが確認されました。カンピロバクター食中毒は保健所に届け出られないケースが非常に多いため、正確な患者数は把握できていませんが、年間のべ約150万人がこの菌が原因の食中毒になっているものと推定されます。
カンピロバクターは鶏や牛、豚などの腸管内に生息し、菌の付着した食肉や臓器などを摂取することによって感染します。症状は39℃以上の発熱、盲腸との識別が難しいほどの激しい腹痛、下痢、血便などです。潜伏期間が最長で1週間程度と長いことも特徴です。カンピロバクターはニワトリに対しては何も悪さをしないので、養鶏場で発見することは困難で、ニワトリから食肉を作る過程が機械化されている現在では、カンピロバクター汚染を防ぐ有効な手立てがない状態です。
▼身振りと音声言語は同一の脳領域で処理
行動自体は身振りと似ている手話については、身振りとは違って、語彙や文法などが存在しているため、音声言語と同じ脳の領域で処理されています。一方で、非言語的な身振りが言語と同じ脳の領域で処理されるかどうかはこれまでわかっていませんでした。
米国立難聴コミュニケーション障害研究所の研究らは、健康ボランティアに、fMRIのなかでパントマイムかエンブレム、またはこれらの身振りが指示する語句を発声している人物の映像を見てもらい、脳の活性を測定しました。パントマイムは、瓶の蓋を開けたりお手玉をしたりなどの動作を模倣すること、エンブレムとはパントマイムよりも情緒的な概念、例えば唇に人差し指を近付け「静かにしろ」と伝えるような行動のことです。
試験の結果、脳の言語領域が身振りと音声言語で共通して強く活性化されることがわかりました。このことは、言語の解釈においては語句の解読にのみではなく、身振りや音声についても同じ脳領域で意味を付与しているようです。この発見は進化における言語の開始を考える上で重要な研究結果であると思われます。
▼ダイエットに失敗する原因を科学的に解明
ボストン大学の研究者らは脂肪と糖分を豊富に含む食品の断続的な摂取は薬物依存症と同じ脳内変化が誘発されることを発見しました。
おいしいけれど健康に悪い食品を我慢する節制の時期とそれらを我慢できず我を忘れて反動的に過食してしまう時期が交互に繰り返される、肥満に関する慢性再発性の病気が知られています。後者の反動的な過食状態が病的に現れる場合は、食べなければならないという恐怖感に襲われていることが一般的で、そのような嫌悪な刺激の除去を目的として誘発される過食についてこれまであまり研究は進んでいませんでした。
ラットを二つのグループに分け、片方のラットには、標準的なエサを5日間与えた後、糖分の多いおいしいエサを2日間与えるサイクルを繰り返しました。もう片方のグループには標準的なエサのみを与え続けました。どちらのグループに対しても食べるえさの量には制限をつけず、7週間飼育しました。
その結果、おいしいものを時々与えられたラットは普通のエサを与えると食欲低下反応を示し、元々は食べていた普通のエサを拒絶し、不安症状を呈するようになりました。ここで糖分の多いエサを再び与えたところ、ラットは過食に走り、不安も消えました。糖分の多いエサを欲しているラットでは恐怖や不安に反応する脳の扁桃体が活性化しており、糖分の多いエサを与えるると正常値に戻ることもわかりました。つまり、おいしいものを我慢するダイエット中は脳の扁桃体が活性化状態にあることが発見され、この状態はアルコールや薬物の禁断症状と同じ現象でした。なお、ラットにおいてこの反応は不安を抑制する薬で解除することができましたので、可能性としてはダイエット中に不安を取り除く向精神薬を飲むとダイエットに成功する可能性がありますが・・・。
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