2010年2月27日
Chapter 279 レアアースに頼らず生物多様性を守る日本で開発された技術

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 地球上には科学的に確認されているだけで約175万種、推定のものも含めると3,000万種の生物がいます。これらの多様な生物種がお互いに影響し合って地球の生態系が形成・維持されています。私たち人間も、周辺の様々な生物と相互作用をしながら生命を維持していますので、地球の生物多様性を守ることは私たち人間の生活環境と繁栄を守ることでもあります。

 生物の多様性の変化の中で、生物種が絶滅することは自然界では普通のことですが、現在の地球では人間の活動によって多くの生物種が絶滅の危機に瀕しています。生態系にダメージを加える人間の活動を列挙すればきりがありませんが、近年目立ってきた原因の一つにハイテク機器の生産に必要な貴重資源(レアメタルやレアアース)の採掘があります。

ニューカレドニアの場合

 ニューカレドニアは南太平洋にある四国ほどの島でリゾート地として知られています。この島は大部分の地面が金属資源を多く含む地層でできていますので、金属資源の採掘が19世紀から行われていました。21世紀になると大企業による、大型機械を用いた大規模な資源の採掘が始まり、著しい環境破壊と多くの動植物の絶滅が発生しています。

南米の場合

 南米のペルーは世界屈指の資源大国で、山林を破壊しての露天掘りによる金鉱山、銀鉱山の積極的な開発が行われています。金鉱山からは金を取り出したあとの岩石が年間8000万トンも川に廃棄されています。その悪影響を多くの生物や先住民が受けています。

 最先端のIT機器の生産にはレアメタルやレアアースと呼ばれる入手の難しい物質が必要不可欠であり、それらの確保は大きなビジネスにつながるほか国家の産業を守ることにもつながります。

 一方で、レアメタルやレアアースの入手が難しくなるなら、それらを使用しない製品を開発しようという研究も各社で進んでいます。たとえば、三菱電機はレアアースを使わずに電気自動車にも使用可能な高い出力を持つモーターを開発することに成功しました。一般的なモーターはケースの中で軸が回転する構造になっていますが、軸に永久磁石を固定し、ケース側に電磁石を設置して両者の反発で回転力を生み出します。高い磁力を得るために永久磁石にはネオジムやディスプロシウムなどのレアアースを使用しています。そこで三菱電機では、軸の側の磁石にも電磁石を使うことによってレアアースを使用しないモーターを開発しました。
 
 レアメタルについても、豊田合成がレアメタルのインジウムを使わない青色ダイオード用の透明電極を開発したと発表しました。代替材料としてより入手しやすい二酸化チタンを利用することに成功したものです。インジウムは産出の約5割が中国に偏り、今後の価格高騰や供給不足に対する懸念が出ているレアメタルです。

ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ

▼ウニはトゲで見る

 ウニには目がありませんが、ウニの視覚に関する新たな研究で、ウニはトゲに覆われた体全体が1つの眼のような働きをすることが確認されました。トゲに当たる光を感知し、その光の強度を比較して周囲の状況を知るようです。実際には眼を持たないウニですが、その視覚的能力はオウムガイやカブトガニなど眼を持つ海生の無脊柱動物に近いことも、今回の実験の結果から示唆されました。

▼握手は究極の触診?!超高齢者の握力と死亡の関連

 85歳以上の超高齢者を対象とした調査結果から、握力の減少と死亡に有意な相関があり、死亡リスクと握力の関係を調べると、握力を著しく失ったお年寄りの死亡リスクはそうでないお年寄りの2倍にも達することがわかりました。

▼恐竜の全身の体色が初めて解明された

 およそ1億5500年前の羽毛恐竜アンキオルニス・ハックスレイの詳細な体色が明らかになりました。恐竜の全身の色が明らかになったのは初めてのことです。この恐竜はニワトリほどの大きさ、キツツキに似た外見で、その羽は白黒のまだら模様が目立ち、赤褐色、黒、灰色、白の複雑なパターンから成っていました。


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バックナンバー
   
Chapter 278 ツタンカーメンの死因
Chapter 277 最近の人工衛星の話題 
Chapter 276 1年中咲き続けるサクラの開発に成功 
Chapter 275 マイクロキメリズム 
Chapter 274 生命科学に関する最新の話題を盛り合わせ
Chapter 273 レスベラトロール  
Chapter 272 最近発見された生物  
Chapter 271 2010年はリンの貴重さに思いをはせる年にしましょう  
Chapter 270 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 後編  
Chapter 269 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 前編  
Chapter 268 臭わない病気、聞こえない病気に関する最新情報  
Chapter 267 プランクトンが住みにくくなる北極海  
Chapter 266 宇宙でがんばっている探査機たちに思いをはせる  
Chapter-265 伝統医学
Chapter-264 軌道エレベーターと宇宙太陽光発電 
Chapter-263 最近耳にしなくなったオゾンホールの現状と地球温暖化との関係
Chapter-262 金平糖のサイエンス 
Chapter-261 30分でわかるノーベル賞2009  
Chapter-260 リチウムイオン電池
Chapter-259 iPS細胞の応用研究
Chapter-258 月での水の存在
Chapter-257 早起き遺伝子と恐がり遺伝子
Chapter-256 グラフェン
Chapter-255 地球温暖化とちょこっと発電 
Chapter-254 水素から電子を取り出す新しい触媒の発見 
Chapter-253 水にも構造がある 
Chapter-252 食べものと体内時計の関係
Chapter-251 金縛りについて
Chapter-250 国際宇宙ステーション日本実験施設きぼう  
Chapter-249 脳神経科学の話題  
特別番組 山口県立山口図書館 ちょこっとサイエンス講座「宇宙人はなぜそのヘンを歩いていないのか?」 
Chapter-248 サリドマイドの生化学 
Chapter-247 太陽系外惑星探査の歴史と現状 
Chapter-246 氷核活性細菌
Chapter-245 一卵性双生児の最新科学 
Chapter-244 ダークマターとダークエナジー
Chapter-243 フローティングタッチディスプレイ
Chapter-242 トランスジェニックコモンマーモセット
Chapter-241 食感とおいしさの関係
Chapter-240 獲得形質の遺伝に似た現象
Chapter-239 マルチバースと人間原理


>> 「Mowton(放送終了)」はこちら

Science-Podcast.jp 制作






科学コミュニケーター 中西貴之(メール
アシスタント BJ

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ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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