2010年3月20日
Chapter 282 高速増殖炉「もんじゅ」とは?
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1995年12月に事故を起こし、それ以来運転を停止している福井県敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」は15年ぶりの運転再開を目指し準備中です。「もんじゅ」は、原子炉で燃料の原子核に秒速1万キロメートル以上で飛行する高速中性子を衝突させて熱を発生させる原子炉で、さらに、発電しつつ核燃料を増殖させるため、この2つの特徴を合わせて高速増殖炉といいます。
従来から発電に使用されている原子炉は軽水炉と言います。軽水炉型の原子炉では、普通の水(軽水)に圧力をかけて沸点を高くした状態で原子炉の周りのパイプに循環させて、核分裂の熱をこの水に移して熱を取り出します。核分裂を起こす働きを持つ中性子が水分子と衝突するとエネルギーを失います。そこで高速増殖炉の場合は高速中性子の速度を落とさない性質を持つ金属ナトリウムを軽水の代わりに使っています。ところが、金属ナトリウムは、酸素や水と触れると激しく反応して事故が起きやすいという欠点があります。「もんじゅ」が運転停止になったのも、配管が壊れて金属ナトリウムが漏れ出したことが原因です。金属ナトリウムの代替物質はいくつかありますが、経済性を考えると金属ナトリウムに代わることができる優れた物質はまだ見つかっていません。
高速増殖炉の燃料、MOX燃料は、燃料となるプルトニウム239とウラン235そして、核分裂をほとんど起こさず燃料にはならないウラン238が混合されて固められた物です。炉心内の周辺部にはウラン238を主成分とする燃料の固まりが配置されています。これをブランケットと呼びます。炉心中央部からは、プルトニウム239やウラン235の核分裂連鎖反応で高速中性子が放出され、ブランケットに衝突します。高速中性子はブランケット内のウラン238の原子核に取り込まれ、ウラン239となり、ウラン239の原子核の中で中性子が電子と反電子ニュートリノを放出して陽子に変化するβ崩壊という反応によってネプツニウム239を経て燃料であるプルトニウム239に変わります。
核分裂をほとんど起こさない、ウラン238はもともと燃料として使用できるウラン235に比べると入手が容易です。そこで、高速増殖炉によって発電に使えないウラン238をエネルギー源として価値の高いプルトニウムに転換することができれば、安定的なエネルギーの供給につながるというわけです。
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタのコーナー
▼炭素分子の膜にデータを書き込む技術を開発
独立行政法人物質・材料研究機構の研究グループは、60個炭素原子でできたフラーレン分子が膜状に集まった構造体の中で化学反応を分子1個の精度で自在に制御する方法を発見し、それを基に作成した記録媒体へ不揮発のデジタル情報を超高密度に蓄積する新技術の開発に成功しました。
記録はC60フラーレンを並べた超薄膜へ、金属針を接近させ、金属針直下のC60フラーレン分子へ化学反応を誘起することによって、60フラーレン分子間の結合状態と非結合状態を意図的に選択することによって行います。結合状態を1とし、非結合状態を0としてデジタル情報を構成し、情報蓄積を行ったところ、既存のストレージ素子の約1,000倍の面密度でデジタル情報を記録、消去、再記録することに成功しました。
▼恐竜は隕石の衝突で雑滅下と確定
約6550万年前の白亜紀末に生物の大量絶滅が起き、海の生物では科のレベルで約66%が絶滅しました。陸上では恐竜などの大型動物の絶滅が起きたのがこの時代です。この絶滅が、直径10kmの地球外天体の衝突により引き起こされたという仮説が1980年に提唱され、その後、1991年にメキシコ・ユカタン半島に直径180
kmの白亜紀末の衝突クレーターが発見され、恐竜絶滅が隕石の衝突が原因であることはかなり有力視されるようになりました。けれど、大規模火山噴火説や恐竜絶滅と隕石衝突は約30万年もの時間差があるため関係がないとする説なども唱えられ続けました。
この問題に対し、地質学、古生物学、地球物理学、惑星科学など分野を超えた世界12カ国、総勢41人もの研究者でチームを結成し、これまで世界中で報告されている地質学的痕跡、衝突クレーターの物理特性、数値モデルの結果などが再検討されました。
その結果、ユカタン半島への地球外天体の衝突によって引き起こされた環境変動のみで白亜紀末の生物大量絶滅をすべて説明できることが明らかになりました。また、数値計算の結果、恐竜絶滅の原因は、地球外天体の衝突により放出された粉塵や硫酸塩、森林火災に伴う煤などの量や大気滞留時間が植物プランクトンなどの光合成生物の活動を長期間停止させ、食物連鎖の基底をなす光合成生物が死滅したことにより、恐竜などの大型生物は食料を採取できなくなり絶滅したものであることが推定されました。
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