2010年2月20日 ツタンカーメンは、紀元前1342年頃に生まれ、紀元前1324年頃に死んだ古代エジプト第18王朝のファラオつまり、王様です。父親は今回の研究でアメンホテプであることが確定されましたが、これまではアメンホテプの子供ともイクナートン、つまり、ツタンカーメンの奥さんの父、言い換えると義理の父親の子供とも言われていました。 ツタンカーメンの墓はナイル川中流の王家の谷にあり、1922年にイギリスの考古学者ハワード・カーターにより発見されました。このとき、墓はほとんど盗掘されていない状態で、黄金のマスクは非常に有名です。また、ツタンカーメンの墓には出産直後か死産かと見られる二体の子供のミイラも一緒に葬られており、以前からこれはツタンカーメンの子供だと考えられていましたが、こちらについても今回の研究で、出産前に死んだツタンカーメンの子供であったことが遺伝子から確定されました。 2005年に行われたCTスキャンを用いたミイラの調査が行われています。このときの報告では、死亡推定年齢は19歳、身長は165cmで体格は非常に華奢、足の骨が変形する内反足だったため、杖をつかなければ歩けなかったのではないかとされています。ツタンカーメンは死亡の数日前に骨が皮膚から突き出すほどの大腿骨骨折をしたことが調査で判明しましたが、これが不慮の事故によるものか、誰かの意図的なものかについてはまだわかっていません。CTスキャンのデータと現代の骨折事故における骨の折れ方との相関から戦車から転落した可能性が高いとされています。 今回の調査ではツタンカーメン王の他に、その一族と見られる16体のミイラのDNA鑑定、CTスキャンなどによる分析が行われました。 DNA鑑定による血縁関係判定の結果、これまで KV35EL と呼ばれていたミイラがアメンホテップの母、つまり、ツタンカーメン王の祖母。そして、KV55 と呼ばれていたミイラがアメンホテップ、つまりツタンカーメン王の父であることが確定されました。 古代エジプト絵画ではツタンカーメン王は女性的な体つきで描かれているため、女性化乳房や細長い手足など、体の外見が女性的になるマルファン症候群という病気だったのではないかという説もありましたが、これはその病気の証拠はなかったということです。一方で、足の骨に炎症が起きる病気であるケーラー病に一族がかかっていたことがわかりました。さらに、一族のミイラから熱帯熱マラリア原虫遺伝子が発見されたため、ツタンカーメン王の死因はマラリアに侵され体力の低下を来し、もともとケーラー病による足の骨の壊死があったため、歩くことが不自由で何らかの原因で転倒骨折し、マラリア感染の合併症で死んだのではないかとしています。 ちょきりこきりヴォイニッチ ▼炭酸飲料を多く飲むと膵癌リスクが高まる 米ミネソタ大学とシンガポール国立大学が共同でアジア人を対象として実施した研究によって、炭酸飲料を多く飲む人は膵癌の発症リスクが増大する可能性のあることがわかりました。中高年以上の中国系シンガポール人6万人を対象に、果汁および炭酸飲料の平均摂取量を算出するとともに、14年間の追跡調査で膵癌の発症数を調べました。 ▼たばこの煙の残留物による"三次喫煙"が新たな問題に 室内でたばこを吸うと壁や床および室内においてあるすべてのものにたばこの煙の残留物が付着します。これらを吸い込んでしまうことを三次喫煙といいます。新たな研究でこれらの残留物が空気中の物質と反応することにより、発癌物質が形成される可能性のあることが示されました。 ▼アデノシン三リン酸が赤血球の形を維持している 赤血球は平らな卵形、あるいは、円盤形をしています。普通なら細胞はミートボールのような球や、カニクリームコロッケのような細長い形になるはずですが、赤血球はそれらとは明らかに違います。赤血球がこのような不自然な形を維持できるのは、赤血球が常に振動しているためであることがわかっていて、この振動は細胞の形の維持だけではなく、組織に酸素を供給するために変形しながら血管内を移動するうえでも重要な役割を果たしています。 今週の無料番組
|
Science-Podcast.jp
制作
このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
|