2010年12月11日
Chapter-318 JWST建造中
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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)はハッブル宇宙望遠鏡が退役した後、次の世代を担う、現在NASAで製造中の宇宙望遠鏡です。ハッブル宇宙望遠鏡は可視光で宇宙を観測しましたが、JWSTは赤外線で宇宙を観測することによって主には宇宙の始まりに迫ることになっています。
JWSTの最大の特徴はハッブル宇宙望遠鏡の7倍の光を集めることができる巨大な反射鏡です。反射鏡でたくさんの光を集めるにはそれに応じた大きさの鏡を用意することが必要ですが、ハッブルの7倍を集めるほどの鏡は製造も難しいですし、そのような巨大な鏡を打ち上げることのできるロケットを人類はまだ所有していません。そのため、JWSTでは6角形の鏡18枚を組み合わせて大きな反射鏡を形成する設計になっています。
1枚の鏡の厚さは5センチメートル、差し渡しは120センチメートル程度あり、ベリリウムという元素でできています。ベリリウムは原子番号4の銀白色の元素です。鏡の厚さは5センチメートルですが反射に関わる層の厚さはわずか2.5ミリメートルしか無く、それを支えるフレームも軽量化のために極限まで削られて、鏡1枚の重さは21キログラムしかありません。
赤外線を観測するJWSTは衛星自体を非常に低い温度に冷やす必要があります。赤外線望遠鏡にとって地球は巨大な熱源ですので、NASAはJWSTを月よりも遙かに遠い、地球から150万キロメートルも離れたL2と呼ばれるポイントを周回する軌道に打ち上げることにしています。L2は地球や太陽からの引力のバランスが釣り合った地点でここでは衛星はわずかな軌道修正を続けるだけで安定に存在することが出来ます。JWSTはL2地点を中心とした円軌道を6ヶ月周期で周回しながら、地球の公転に合わせて1年で太陽のまわりを1周します。L2ポイントは軌道を維持するために燃料を消費しますが、JWSTは10年分の燃料を搭載し、したがって運用期間は最長10年を計画しています。
JWSTは大きな日よけを装備していて、観測装置をその陰に入れることによって自然冷却します。その日よけはバレーボールコートほどの大きさがありますが、地球を離れ所定の軌道に向かう途中で展開し、JWSTの温度を徐々に冷却し、最終的には-218℃まで自然冷却することになっています。宇宙の始まりに近い130億光年も彼方からの星の光を捉えるにはこれほどの冷却が必要です。
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