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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■翔泳社”ポッドキャスティング入門”でオススメ番組として紹介されました。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-95 朝日新聞の1月27日版によると恐竜によく似た特徴を持ち、二足歩行するワニの「親類」が2億1000万年前ごろに生息していたことが確認されました。この体長2メートルの動物は「エフィジア・オキーファエ」と名付けられました。この化石は60年前に見つかっていたものですが、全体の形態からダチョウの仲間と思われていました。けれど、年代的にダチョウの祖先が生きていた時代よりもさらに8000万年も前のものであることや足の関節がワニ型である点がダチョウの祖先であることを否定する根拠となり、ワニに近いけれど、これまで知られていなかった新しい動物であるとされました。現在の生物の中に直接の祖先はいないようです。 NASAのニューホライゾンズサイトの1月19日のミッションニュースによりますと、冥王星探査機「ニューホライゾンズ」の打ち上げに成功したとのことです。1960年代初頭以来、NASAは太陽系の惑星に無人探査機を次々に送り込みましたが、冥王星へのミッションが成功すれば、すべての惑星の探査が完了することになります。冥王星までの距離はおよそ48億キロメートルですが、ニューホライゾンズはこれまで打ち上げられた中で最も高速の探査機で、わずか9時間で月に、1年で木星に到達し、冥王星到着は10年後の予定です。また、この探査機は、太陽系の外縁部の氷の天体が集まる謎めいた領域、カイパーベルトも探査する予定になっています。 株式会社ファーストエスコ(総合エネルギーサービス企業)の木質チップを利用したバイオマス発電所がくりらじスタジオのあります山口県(岩国市)で運転を始めました。プレスリリースによりますと「岩国ウッドパワー」という子会社の発電施設で10,000kW。このクラスの商業用発電所としては、国内初とのことです。 バイオマス発電とはなんでしょう? ということで、株式会社岩国ウッドパワーのWebサイトを見てみますと、土木・建設現場で発生する抜き取った樹木、製材所や造園業、林業の場から出る端材・剪定枝などを、燃料供給会社で選別破砕することによって木質チップを作成、それを燃料にして蒸気タービンを回すという事のようです。 では、バイオマスエネルギーとは何かというと、木材、草、海草、糞尿や動物の死体などの畜産廃棄物などの再生可能な生物由来の有機性資源で原油・石炭などの化石燃料を除いたものとされています。山口県のバイオマス発電所はこれらの中で木材などを燃料としますがこれは山口県が林業が盛んで剪定枝などが十分供給されるためですが、宮崎の牛や鹿児島のニワトリなど畜産の盛んな県では畜産廃棄物を燃料としたバイオマス発電所がすでに準備中です。 この中で特に木材系のバイオマスは再生可能という点で非常に優れています。植物は空気中の二酸化炭素を取り込んで体の構成成分にしています。バイオマス発電所も結局はこれらを燃やして発電するのですが、ここで出てくる二酸化炭素は元々植物が大気中から取り込んだものだと考えられますので、地球全体での二酸化炭素の収支がそろうカーボンニュートラルという概念を導入することができます。また、燃料とするために樹木を伐採したあとに植林を行えばバイオマス燃料が再生可能である点も使ってしまえば終わりとなる化石燃料と大きく異なる点です。 再生可能という表現を使いましたが、1997年に制定された経済産業省所管の新エネルギー法によると再生可能なエネルギーの中には太陽光、太陽熱、風力なども含まれています。これらひとまとめの再生可能なエネルギー源のうち、バイオマスの決定的な特徴は有機物であるという点にあります。現在のバイオマス燃料の使い方としては燃やして蒸気タービンを回すという方法が中心ですが、このほか、ガス化、バイオディーゼル燃料化などの熱化学的変換、バクテリアの働きで発酵させエタノールを取り出す生物化学的変換や、炭化させて木炭を作るという太古の時代から行われている樹木の燃料化の方法もバイオマスエネルギーの範疇に入ります。 燃料としてのバイオマスの種類もそのエネルギーへの変換方法にも多くの選択肢がありますが、現在最も有効であろうと思われているのが畜産廃棄物の利用です。先ほど宮崎や鹿児島ではこの畜産廃棄物を使った発電が計画されていると述べましたが、驚いたことに日本中で排泄される家畜の排泄物のうち四分の一が九州で生じているそうで、家畜の排泄物は元々カーボンニュートラルな植物であったことを考えると山から木材を伐採してくるよりも先に廃棄物処分も兼ねて糞尿で発電を行うことは自然な発想といえます。 雑誌「化学」の2006年1月号によると、東南アジアに存在する林業や畜産業に伴って発生した廃棄物バイオマスをエネルギーに換算すると世界全体で消費されるエネルギーの20パーセントをまかなうことができるほどの量であることが分かりました。こういった地域ではハイテクの太陽光や風力よりもまず廃棄物バイオマスに力を入れることが適当かもしれません。 欠点としては重量あたりの発電量が化石燃料に劣る点や、材木を燃料として利用するまでの過程で伐採や輸送で二酸化炭素を発生させてしまう点、コストが高い点などがありますが、太陽光や風力などと合わせてエネルギー源の選択肢を将来に向けて増やしていくことも重要ではないかと思われます。 [エンディング・他局の科学番組放送予定] |