2011年1月1日
Chapter-321 太陽系に関する近頃の発見
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ボイジャー1号、太陽風の行き止まり点を通過
1977年に打ち上げられた「ボイジャー1号」は現在も運用が続けられており、現在位置は太陽から140億キロメートルの彼方です。ボイジャー1号は太陽風が太陽系外の環境と衝突する末端衝撃波面をすでに超え、太陽系を脱出して星間空間に突入しようとしています。現在の飛行速度は秒速17キロメートルで、しかも、ほとんどの観測装置と通信系は健在です。
観測装置を動かす原子力電池は打ち上げ直後には470ワットあった出力が285ワット程度にまで低下しています。けれど、不要な観測装置の電源を切って節電する処置がとられていることにより2020年頃まで電力を供給することが可能な機器は、低エネルギー荷電粒子計、宇宙線観測計、磁場計、プラズマ計測計などですので、星間物質に関する観測データを人類が初めて入手できる可能性があります。
運用するNASAは2010年12月13日、ボイジャー1号が、太陽風の速度がゼロとなる境界点を通過したと発表しました。この発表が意味するところを説明しますと、太陽系の中では、太陽が放出するプラズマの流れである太陽風が外向きに吹いています。ボイジャー1号が送ってきた現在位置のデータによると、その太陽風の外向きの速度が、太陽圏外から太陽系に向かって吹き込む恒星間風とバランスが取れて風速がゼロになっているらしいのです。
1977年9月に打ち上げられたボイジャー1号は、1979年に木星、1980年に土星を接近観測してから太陽圏の外に向かって飛行を続け、2004年には末端衝撃波面を通過しました。末端衝撃波面とは、太陽風が恒星間風と衝突する境界のことで、その外にあるヘリオシースと呼ばれる空間ではさらに太陽風は弱まっていきます。
ボイジャー1号の現在位置における太陽風の絶対速度は、ヘリオシースの中を航行する探査機のスピードと、太陽風のプラズマ粒子が機体にぶつかるスピードから推定されます。2007年8月に秒速60kmだった太陽風は、ボイジャーが太陽から離れて1年進むごとに20kmずつ遅くなり、今年6月にとうとうゼロになってしまいました。その後4か月間の測定でもこの値が安定して変わらないことが確認されています。おおよその見積もりでは、4年後には太陽圏の最果てに到達し、人工物として初の恒星間航行を開始すると見られています。
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