子供たちに聞かせてあげたいノーベル賞

2011年3月12日
Chapter-331 リチウム−空気電池

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 電池の中でも、放電後に充電して再度使用できる電池のことを二次電池と言います。現在商用化されている二次電池の中でエネルギー密度が一番高いリチウムイオン電池は、負極・正極と電解液の間でリチウムイオンが放出されたり、吸収されたりを繰り返す原理で充電・放電しています。エネルギー密度は、現在約100〜140Wh/kgです。この値をガソリンと比較すると、ガソリンの場合はエンジンの効率と燃料タンクの重さを考慮しても700Wh/kgもあり、ガソリンと比較するとリチウムイオン電池はかなりエネルギー密度が低いことがわかります。

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が策定した研究開発のロードマップでは、2030年以降に本格的に電気自動車が導入されることになっています。そこで想定されている電気自動車用バッテリーのエネルギー密度の値は、ガソリン並みの700Wh/kgです。リチウムイオン電池のエネルギー密度の限界は250〜300Wh/kgといわれていますので、ガソリン並みに大きなエネルギー密度は、従来型リチウムイオン電池では実現が難しく、何らかの革新的な次世代リチウムイオン電池の開発が欠かせません。そこで次世代リチウムイオン電池の有望株として注目されているのがリチウム−空気電池です。

正極で反応する物質として空気中の酸素を用いる金属−空気電池では、電池内部には酸素を封入しておらず、大気中の酸素を利用します。このため、理論的に正極の容量が無限となることから大容量電池が可能として注目されています。金属−空気電池は開発の歴史が長いため、すでに一部は実用化されていて、おもに亜鉛−空気電池が、補助器の電源として使用されています。そのエネルギー密度の理論値は、1350Wh/kgもあります。金属リチウム−を使うリチウム−空気電池は米国の研究グループによって1996年に初めて実際に動作する物が発表されましたが、このエネルギー密度の理論値は11,140Wh/kgとなり、金属−空気電池の中で今のところ最も高性能です。

 大容量の電池として実用化が最も有望視されているのが有機電解液と水溶性電解液を組み合わせたハイブリッド電解液を用いたリチウム−空気電池です。この新型リチウム−空気電池は電極が浸かっている電解液が固体の電解質膜で仕切られた有機電解液と水溶性電解液の2槽構造になっているのが特徴です。この電池の場合、空気極中の触媒表面において、空気中の酸素と水の間で還元反応が行われて水酸化物イオンを生成しますが、その水酸化物イオンは、完全に水溶性電解液に溶けます。さらに有機電解液と水溶性電解液の間にセパレーターとして、固体電解質膜が使用されていますが、この膜はリチウムイオンのみを通過させる性質があり、水分や電解液に溶け込んだ気体、水酸化物イオン、プロトンイオンなどほかのさまざまなものを通さないため、イオン選択的なセパレーターとしての役割を果たしています。そのため、負極側の有機電解液と正極側の水性電解液の混合を防ぐことができ、かつ電池としても問題なく反応します。

 この新型リチウム−空気電池では、まず正極側で空気中の酸素と反応して水酸化物イオンを生成しますが、これは別の次世代電池として期待されている燃料電池での反応とまったく同じコンセプトです。また、負極側に金属リチウムを使うのは、リチウムイオン電池の負極とまったく同じ考え方です。したがって、新型リチウム−空気電池は燃料電池とリチウムイオン電池からなる「ハイブリッド電池」ともいえます。

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ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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