2011年2月5日
Chapter-326 お茶の効能を分子レベルで解明
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茶の有効成分として、最も注目されているのがカテキン類です。カテキン類は、ポリフェノールの一種で、カカオや果物など茶以外の植物性食品にも含まれています。緑茶カテキン類は抗菌作用、抗ウイルス作用、がん細胞増殖抑制作用、脂質代謝改善作用、血圧上昇抑制作用及び抗アレルギー作用などの多彩な生理作用が報告されており、化学構造の違いが生理活性の強弱に影響することが明らかになっています。
実験系により多少の差異は認められますが、多くの研究においてガレート型と名付けられた一群のカテキンは、非ガレート型カテキンに比べて強い抗ウイルス作用や抗菌作用を示します。この要因の1つに、ガレート型カテキンが非ガレート型カテキンに比べてウイルスの膜や菌体の最外殻に存在する細胞膜表面に強く結合し、流動性や柔軟性などの膜機能を低下させることが挙げられます。抗ウイルス作用あるいは抗菌作用に注目すると、ヒトインフルエンザA型、ピロリ菌、大腸菌などで、リン脂質膜と親和性の高いガレート型カテキンが非ガレート型カテキンに比べて高い活性を有しています。
がん細胞の増殖抑制作用は、カテキン類に期待される生理活性の1つですが、その活性の強弱にも化学構造の違いが大きく影響します。培養細胞や動物を用いた多くの実験系において、ガレート型カテキンは非ガレート型カテキンに比べて非常に強いがん細胞増殖抑制作用を示しますが、その理由はごく最近までほとんど明らかになっていませんでした。一般に、体内に取り込まれた生理活性物質が細胞に直接的な作用を示すためには、細胞内あるいは細胞膜上に存在する受容体などのタンパク質に作用し、細胞機能を制御する必要があるため、カテキン類に関しても特異的に相互作用するタンパク質の存在が予想されていました。
近年、ガレート型カテキンと高い親和性を示し、がん細胞の増殖抑制に関与する細胞膜上の受容体として67kDaラミニンレセプター(67LR)が発見されました。67LRは正常細胞に比べてがん細胞に高発現し、その増殖や転移などに関与するタンパク質です。ガレート型カテキンはこの67LRと高い親和性を有し、結合することにより細胞内のシグナル伝達を制御することで、がん細胞の増殖阻害やアポトーシス誘導などを媒介します。
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